ソーセージだけじゃない──オクトーバーフェストで食べるべき本場料理と、ビールとの合わせ方【オクトーバーフェスト訪問記④】

「オクトーバーフェストって、ビールをたっぷり飲むところでしょ?」
正直、私たちシュマッツメンバーもそのくらいの認識でミュンヘンに向かいました。でも実際にテレージエンヴィーゼのテントに入った瞬間、ビールジョッキ以外にも様々な料理と、それをつくる巨大な調理場に驚きました。
テントに入って最初に気づいたこと──食事の存在感
「ビールだけ」では行かれない理由
オクトーバーフェストのテントに一歩入ると、まず目に飛び込んでくるのはジョッキを運ぶウェイトレスたちの姿。でもよく見ると、両手にジョッキだけでなく大皿も抱えています。丸焼きのチキン、骨付き豚脚、大判のブレッツェルが次々とテーブルへ。
テント内は基本的に着席制です。席を確保してウェイトレスを呼べば、料理もビールも一緒に注文できます。「立ち飲みでビールだけ」という場面はほとんど見かけませんでした。むしろ、料理を頼まずに飲んでいる人のほうが珍しいくらい。
ドイツ人にとって、ビールと食事は最初からセットなんです。おなかを満たしながら飲むことで、何時間でもテントにいられる。そういう設計で文化が作られているのを、現地で改めて肌で感じました。ビールの飲み方や楽しみ方の背景が気になる方は、こちらの記事「[本場ドイツのビールの楽しみ方]」もあわせて読んでみてください!
まずは押さえておきたい、現地の定番3品
ヴィースンヘンドル──皮パリッと、ビール片手にかぶりつく
テント内でいちばんよく見かけた料理が、ハーフチキン(ヴィースンヘンドル)です。「Wiesn(ヴィースン)」はテレージエンヴィーゼの通称、「Hendl(ヘンドル)」はバイエルン方言でニワトリのこと。「お祭りのチキン」という意味合いです。
これが想像以上においしい。ホフブロイのテントでは「frisch vom Spieß(串から取り立て)」と明記されていて、皮はパリパリ、中はジューシー。パセリとバターで仕上げた伝統製法で、手でつかんでかぶりつくのが現地のスタイル。ナイフとフォークを使っているのは観光客だったりします(笑)。
シュバインスハクセ──骨ごと出てくる迫力の豚脚
もう一つ、テント内で「おっ」となるのがシュバインスハクセ(Schweinshaxe)。豚の脚肉を丸ごとローストした一品で、大皿に骨ごとドンと出てきます。
外はカリカリ、中はほろりとほぐれる食感。2〜3人でシェアできるボリュームがあります。日本では「アイスバイン」という名前の塩漬け豚脚料理が知られていますが、シュバインスハクセはローストタイプで別物です。見た目のインパクトも含めて、「本場に来たな」と感じさせてくれる一皿でした。
ブレッツェル──それ、「プレッツェル」とは別物です
「プレッツェルって、コンビニで売っているカリカリのやつですよね?」

実は、オクトーバーフェストで食べるものはそれとは全然違います。現地での名称は「Brezel(ブレッツェル)」。バイエルン方言では「Brezn(ブレッツン)」と呼ばれています。
日本語の「プレッツェル」は英語の"pretzel"が由来で、主にスナック菓子のイメージとして定着しました。でも本場のブレッツェルはやわらかいパンです。ラウゲン(アルカリ液)に浸してから焼くことで、表面が深い茶褐色になり、独特のもっちり感と塩気が生まれます。
テントで出てくるサイズは、両手で抱えてもはみ出るほど大きい。ちぎって食べるのが正解で、ビールを飲みながらつまめるのがいいんです。「プレッツェル=スナック」のイメージしかなかった方は、ぜひ本物のブレッツェルを体験してみてほしいです。
バイエルン人が本当に好きなもの──オバツダという発明
廃棄から生まれた「チーズスプレッド」の正体
ヘンドルやハクセはわかりやすいごちそうですが、現地に通う人ほどまず頼むのがオバツダ(Obatzda)です。
オバツダは、シュマッツでも定番の人気タパスメニューです!

チーズのような見た目の淡いオレンジがかったペーストで、これ、実は1920年代に生まれたバイエルンの伝統料理。フライジングのビアホールで働いていた女将、カティ・アイゼンライヒが「硬くなったカマンベールをどうにかして使えないか」と考えて作ったのが始まりとされています。
基本の材料は熟成カマンベール、バター、みじん切りの玉ねぎ、塩、胡椒、パプリカパウダー、キャラウェイ(ヒメウイキョウ)。現在はEUの地理的表示によって材料の規格も定められています。廃棄から生まれた料理が「公式なバイエルン料理」にまで昇格したというのが面白いですよね。
ブレッツェルに塗って食べる、これがバイエルンの正解
食べ方はシンプル。ブレッツェルをちぎって、たっぷりのオバツダをつけて食べます。
風味は独特で、熟成チーズの塩気とキャラウェイの爽やかなスパイス感が混ざり合います。脂肪分があるのにくどくなく、ブレッツェルの塩気とも相性が抜群。ビールを一口飲んだあとのつなぎとして、この組み合わせは完璧でした。
パウラナーのテントではオバツダをルッコラの上にのせ、パプリカ玉ねぎリングとブレッツェルを添えた現代的なスタイルで提供されていました。伝統料理の新しい顔を見た気がします。
テント外にも美食がある──屋台と穴場料理
ステッカーフィッシュ──煙と炭火のにおいをたどれ
テントの外、会場をぐるりと歩いていると、あちこちから炭火の煙が漂ってきます。煙の源を探していくと、長い串に刺さった魚を炭火で焼く屋台、ステッカーフィッシュ(Steckerlfisch)に行き着きます。
「オクトーバーフェストに魚?」と意外に思う方も多いはず。でもこれがビールに合う。魚を丸ごと串刺しにして、ゆっくり炭火で焼き上げます。香ばしい皮と塩気が、冷えたビールのリセット感を引き立ててくれる。テントの喧騒から少し離れて、屋外でビール片手に焼き魚をかじる体験は、他ではなかなか味わえません。
レバーケーゼ──ミュンヘン市民の「日常」がここにも
もう一つ、現地の人に長く愛されているのがレバーケーゼ(Leberkäse)。名前に「レバー(肝臓)」と「ケーゼ(チーズ)」が入っていますが、実際にはどちらも入っていないという、ちょっとした名前のトラップがあります(笑)。
牛肉・豚肉を細かく挽いてブロック状に焼いた、ミートローフに近いバイエルンのソウルフード。ミュンヘン市内の肉屋やスーパーでは普通に売っていて、パンに挟んでランチに食べるのが地元流。「日常のミュンヘン」がオクトーバーフェストの会場にも滲み出ているのが面白かったです。
現地で気づいた「ビールと料理の関係」
フェストビールが何にでも合う、本当の理由
オクトーバーフェストのテントで提供されているのは、各醸造所が造るフェストビール(現在はヘレス系が主流)です。私たちは現地で何皿も食べながら気づきました。このビール、本当に何と合わせても邪魔しない。
口に入れたとき、わかる気がします。フェストビールは麦芽の甘みと丸みがあって、苦みが強くない。脂たっぷりのシュバインスハクセを食べた直後でも、口の中がすっとリセットされる感覚があります。「脂を流す」という表現がぴったり。
出てきた料理をビールと一緒に食べる、ただそれだけで完成しているんです。オクトーバーフェストの料理全体像については、[オクトーバーフェストとは?]もあわせてご覧ください。
シュバインスハクセを数人でシェアしながらジョッキを傾ける。ブレッツェルをちぎりながら会話が続く。料理があるから席が温まり、席が温まるから友人が増える。そういう食事の時間の設計が、6時間でも7時間でもテントに人を留まらせる秘密なのかもしれません。
シュマッツで、あの体験をもう一度
ミュンヘンの熱気と料理の迫力は、やはり現地に行かないと伝わりきらない部分もあります。ただ、「ドイツビールと料理を一緒に楽しむ」という体験なら、シュマッツのレストランでも再現できます。
ブレッツェルやオバツダなど、本場バイエルンの定番料理と、それに合わせたドイツビールをご用意しています。ぜひ一度、シュマッツでその組み合わせを体験してみてください。
*シリーズ前回の記事では、アウグスティーナーの「木樽ビール」と冷蔵タワーの秘密に迫りました。次回は、そのビールを注ぎ続けるプロたちの世界へ。*
