どうやって動かすのか?──主催者・出店者・広大な会場の仕組みを解剖する「オクトーバーフェストの裏側」

どうやって動かすのか?──主催者・出店者・広大な会場の仕組みを解剖する「オクトーバーフェストの裏側」

どうやって動かすのか?──主催者・出店者・広大な会場の仕組みを解剖する「オクトーバーフェストの裏側」

現地で何度も思ったことがあります。

「これ、どうやって回してるんだろう?」

飲食の仕事をしていると、どうしてもそういう目で見てしまうんですよね。仕入れは?スタッフのシフトは?仕込みのタイミングは?――でもオクトーバーフェストの場合、その問いの規模がもう私たちシュマッツとは全然違う次元ですが(笑)。

今回は、その「裏側」を以前ミュンヘンのオクトーバーフェストで働いた方にも話を聞き、迫ってみました。


「どうやって動かしているのか」──現地で湧いた素朴な疑問

 

◯ 650万人を迎える「仮設の街」の規模感

オクトーバーフェストの会場は42ヘクタール(約42万平方メートル)。東京ドームのグラウンドが約4.6ヘクタールなので、単純計算で9個分ほどです。

「ふんふん」と聞き流せそうですよね。私たちも最初はそうでした。 でも実際に立つと、端から端まで歩いても歩いても終わらない。その敷地に、大型ビールテントが14棟以上、アトラクションが200基以上ひしめき合っています。電気・水道・ガスが引かれ、本格的なキッチンが動き、ATMまで並んでいる。

「街だ」と思いました。普通に。

 

◯ 飲食の仕事をしているからこそ気になった裏側

たとえばシュマッツの一店舗でも、仕入れ・仕込み・スタッフ管理でそれなりの手間がかかります。でもオクトーバーフェストは16日間で650万人を迎える祭りです。気になってしまうのは職業病みたいなものかもしれません(笑)。

規模はケタ違いでも、問いかけは同じです。いったい誰が、どうやってこれを動かしているのか?


テントを出す権利は「家業」として受け継がれる

 

◯ 13項目の採点表で決まるコンセッション争奪戦

テント出店者はミュンヘン市から出店権を与えられた業者です。希望すれば誰でも応募できますが、現実はかなり厳しい。

ミュンヘン市は出店希望者を13項目の採点基準で評価します。各項目は0〜11点で採点され、係数をかけた総合スコアで配分が決まる。事業計画の実現可能性、コンセプト、衛生・安全への取り組みなどが評価されますが、審査は市議会の非公開会議で行われるため、外からはほとんど見えません。

 

◯ 5世代・160年──ショッテンハーメル家という伝説

この制度には、長く続けるほど有利になるしくみが組み込まれています。継続して出店している業者は5回の出店ごとに1ボーナスポイントが加算され、40年以上継続の飲食業者には「伝統ポイント」まで付与されます。

つまり、ボーナスが積み重なれば積み重なるほど、新参者が逆転するのは難しくなっていく。

その象徴がショッテンハーメル(Schottenhamel)家です。1867年から現在まで5世代にわたってテントを運営し続けています。オクトーバーフェストの開幕を告げる「開栓の儀」──ミュンヘン市長が最初のビール樽に木槌を打ち込む式典──が毎年行われるのも、この一族のテントです。

法律で相続権が保証されているわけではありません。でも160年分のボーナスポイントが積み上がった状態で、後から参入して勝つのは現実的に難しい。「家業として受け継がれる」という実態は、制度そのものがつくり出した結果なんですよね。

 

◯ 変わりつつある制度の未来

もっとも、この仕組みに2026年、正面から疑問を呈した人物が現れました。ある出店業者が「現行の配分方式はEUの公開入札義務に違反している」として行政審査機関に申し立てを行ったのです。申し立ては却下されましたが、バイエルン高等裁判所・欧州司法裁判所への上訴が予告されています。

160年以上変わらなかったこの制度が、今まさに問い直されようとしているということです。


開幕82日前から始まる「もう一つの祭り」

 

◯ 1,000台超のトラックが運ぶ仮設都市

オクトーバーフェストが開幕するのは9月。でも会場の準備は、その82日前から始まっています。

2025年の場合、大型テント「フェストツェルト」の設営は6月30日の朝7時にスタートしました。大型アトラクションは8月27日から、バンパーカーやお化け屋敷は9月3日から、残りの全屋台は9月8日から──カテゴリごとに段階的に工事が進んでいきます。

その物量が、また想像を超えています。大型テント1棟あたり、資材倉庫からだけで70〜100台分のトラックが必要になる。全大型テント合計では1,000台超のトラック輸送が行われます。電力ケーブル、水道管、テント幕、テーブルと長椅子──42ヘクタールに都市一つ分の「部品」が運び込まれるわけです。

 

◯ 段階的に組み上がる会場の全容

6月末に始まった設営は、約12週間かけて完成に近づきます。クレーンが鉄骨を持ち上げ、職人たちが内装を仕上げ、ライトが取り付けられていく。

その過程を知ると、オクトーバーフェストはフェスティバルが始まる前から、すでに動き出しているんだと感じます。設営・撤去を担う職人、厨房スタッフ、警備員まで、イベントを下支えする人材も膨大です。テントの中で実際に働く人たちの話は、次の記事でくわしく取り上げる予定です。


数字に圧倒される:650万人・650万リットルの世界

 

2025年のオクトーバーフェストには約650万人が来場しました(前年2024年は670万人)。消費されたビールは約650万リットル(前年700万リットル)。同年は爆発物脅迫による一時閉鎖があって前年を下回りましたが、それでもこの規模です。

「マス(Maß)」と呼ばれる1リットルのジョッキが650万杯。来場者1人あたりに換算するとほぼ1杯になります。もちろん複数回訪れる地元の常連も多いので単純には比較できませんが(笑)、数字のスケール感は伝わりますよね。

ミュンヘン市への経済効果は、宿泊・交通・飲食を合わせると相当な規模になるとされています。世界150か国以上から来場者が集まるイベントですから、それはそうですよね。


閉幕後も6週間続く撤去作業

 

16日間の祭りが終わると、今度は解体が始まります。これもカテゴリ別に撤去期限が決まっていて、マスト設置業者は閉幕後すぐ10月7日まで、アトラクション類は10月17日まで、ビールテントは最終的に11月21日までに完全撤去しなければなりません。

設営から撤去まで合わせると、テレージエンヴィーゼは5か月以上工事現場です。「祭りは2週間で終わる」と思っていると、ここは少し驚くかもしれません。


本場を知ると、ビールの一杯が変わる

 

現地でいちばん印象に残ったのは、じつはこの「スケールの大きさ」だったかもしれません。

160年続く家業、82日前から始まる設営、1,000台超のトラック輸送。それだけの積み重ねがあってこそ、あのテントの一杯が成立しているんです。

ドイツビールがどんな背景を持っているのか興味を持った方は、ドイツビールって何だろう?もあわせてどうぞ。本場の文化を知ると、一杯の見え方がまた変わります。

 

シュマッツのオンラインショップでは、本場ドイツの醸造文化を大切にしたビールを取り揃えています。ぜひのぞいてみてください。

シュマッツ オンラインショップ

レストランでは本場スタイルのドイツビールと料理をお楽しみいただけます。ビールの選び方もスタッフがご案内しますので、お気軽にどうぞ。

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