オクトーバーフェストのビールは何色?──「メルツェンだと思っていた」私たちが現地で知った、黄金色になったワケとメルツェンの底力

オクトーバーフェストのビールは何色?──「メルツェンだと思っていた」私たちが現地で知った、黄金色になったワケとメルツェンの底力

オクトーバーフェストのビールは何色?──「メルツェンだと思っていた」私たちが現地で知った、黄金色になったワケとメルツェンの底力

◯ ミュンヘンに行くまで、私たちも「メルツェンだ」と思い込んでいました

正直に告白します。私も、2025年9月に本場ミュンヘンを訪れるまで、「オクトーバーフェストのビール=あの琥珀色のメルツェン」だと思い込んでいました。

ところが、現地で実際に注がれていたのは、琥珀色ではなく、澄んだ淡い黄金色のビール。「あれ、メルツェンじゃないの?」というのが、正直な第一印象だったんです。

実はこの“勘違い”の裏には、オクトーバーフェスト200年あまりの歴史が隠れています。今日はその謎を、現地で飲んで(しかも飲みきれずに)実感したことと一緒に、ゆるりとお話しします。

 

テントを回って気づいた「同じ黄金色でも、全然違う」

会場でいくつかのテントを回ってみて、おもしろい発見がありました。同じ黄金色のフェストビールなのに、造り手が変わると、驚くほど飲み心地が違うんです。とくに印象に残ったのは、好対照だった2杯でした。

 

《アウグスティーナーの木樽が、別格だった》

ひとつは、アウグスティーナーのフェストビア。これが、もう、おいしすぎました。

澄んだ黄金色で、ひと口飲むと麦の旨味がじわっと広がるのに、驚くほど軽やか。すいすい盃が進みます。実はアウグスティーナーは、会場の6醸造所のなかで唯一、今も木樽から手間ひまかけてビールを注ぐ醸造所。地元ミュンヘンっ子からも「ヴィーズン(オクトーバーフェストの愛称)でいちばん旨い」としばしば評される一本です。その造りの良さが、あの“軽いのに旨い”に表れているんですね。日本ではあまり知られていませんが、現地での評価はちょっと特別。この木樽のフェストビアの話は訪問記の回で、アウグスティーナーの醸造のこだわりはこちらの回で、それぞれたっぷり語っています。

 

《パウラーナーの1リットルは、飲みきれなかった》

もうひとつは、パウラーナーのフェストビア。こちらは正直に告白すると——1リットルを最後まで飲みきれませんでした(笑)。

オクトーバーフェストのビールは「マス」と呼ばれる1リットルの巨大ジョッキで提供され、ハーフサイズはほぼありません。なみなみ注ぐと重さは約2.3kgにもなります。すでに何杯か重ねた体に、これはなかなか効きました。しかも直前に飲んだアウグスティーナーがおいしすぎた、というのもあったかもしれません(笑)。同じ黄金色のフェストビールでも、ここまで表情が変わるのか、と実感した一日でした。

ちなみに、このマス1杯のお値段は2024年でおよそ15ユーロ(約2,400円)。しかも会場では水も負けないくらい高い、というから驚きです。それでも2024年には約670万人が来場し、合わせて約700万杯ものマスが空けられたというのだから、本場のスケールはやっぱり桁違いですね。


◯ そもそも「フェストビール」って、何者?

ここで、現地で飲んだあの黄金色のビールの正体を、はっきりさせておきましょう。

オクトーバーフェストで出されるのは、その時期・その場所でしか飲めない特別な「フェストビール(フェストビア)」。ざっくり言うと、ヘレスを、もう少しコク深く・度数高めにしたようなビールです。澄んだ黄金色で、口当たりはすっきり軽やか。なのに度数は約6%と、ふだんのドイツビール(5%前後)より一段高いんです(いちばん強いホフブロイは6.3%もあります)。色はあくまで澄んだ金色で、赤みを帯びた琥珀色のメルツェンとは、ここがはっきり違います。

 

🍻ヘレスみたいな顔をして、しっかり強い

この「軽いのに強い」が、なかなかの曲者でして。

麦の旨味たっぷりで口当たりがいいものだから、ドイツでは「液体のパン」なんて呼ばれるほど。するする飲めてしまう。でも中身は1リットル × 約6%。軽い気持ちで飲み進めると、じわじわ効いてくるんです。隣のドイツの人たちが涼しい顔で何杯もおかわりしていくのを横目に、私はギブアップ。本場の洗礼を、しっかり受けてきました。


◯ 昔の主役は、琥珀色の「メルツェン」だった

さて、冒頭の“勘違い”の話に戻ります。私たちが琥珀色のメルツェンを思い浮かべていたのは、まったくの的外れではありません。かつてのオクトーバーフェストの主役は、本当に琥珀色のメルツェンだったんです。

メルツェン(Märzen)は、ドイツ語で「3月の」を意味するビール。淡い黄金色ではなく、赤みを帯びた琥珀色で、麦の甘い香りとコクがしっかりある飲み応え系です。これが100年以上、お祭りの顔でした。

 

《なぜ「3月」のビール?──名前に隠された季節の知恵》

ではなぜ「3月」なのか。これがちょっといい話なんです。

昔のバイエルンでは、暑い夏の時期にビールを仕込むことが禁じられていました。冷蔵庫のない時代、暑さの中での醸造は味が傷みやすく、火事の危険もあったからです。

そこで人々は、まだ涼しい3月にビールをたっぷり仕込み、洞窟で氷とともに夏を越させて貯蔵しました。長い夏を越せるよう、度数を高め、麦をしっかり利かせた濃いめに仕上げる。そして秋、新しい仕込みが始まる前に残りを飲み切る——その「飲み切りの宴」が、ちょうどオクトーバーフェストと重なったわけです。

実はこの「保存のために度数を高めた」という事情、今のフェストビールが約6%と強めなことにもつながっています。色は淡くなっても、“強さの遺伝子”はちゃんと受け継がれているんですね。季節と醸造の関係はビール純粋令のコラムでも触れています。


◯ では、なぜ黄金色に変わったの?

100年以上も愛された琥珀色のメルツェン。それが今の黄金色に置き換わった理由は、大きく二つあります。

 

💡 冷蔵技術が「3月仕込み」を過去にした

ひとつは、冷蔵技術の登場です。1870年代、ミュンヘンの醸造所に冷凍機が導入され、一年中いつでも低温でビールを仕込めるようになりました。「3月に仕込んで夏を越す」という工夫が、技術的に不要に。濃いめのメルツェンは「長期保存のための必然」でもあったわけで、その必然がふっと消えたんですね。

💡「ゴクゴク飲める軽さ」、そして1990年代の総入れ替え

もうひとつが、人々の好みの変化です。時代が進むにつれ、ドイツの人たちは色が淡くて軽快な、ゴクゴク飲めるビールを好むようになっていきました。1リットルを何杯も重ねるお祭りの場では、なおさら「飲みやすさ」が正義です。

この流れの先頭を切ったのがパウラーナー。淡い黄金色の軽やかなフェストビールを打ち出し、やがて他の醸造所も追随。1990年代までに、6醸造所すべてが黄金色のフェストビールへと切り替えました。私たちが会場で「あれ、黄金色だ」と驚いたのは、この100年あまりの変化の、いちばん新しい姿だったわけです。


◯ でも「メルツェン」は、負けたわけじゃない

ここで、声を大にして言いたいことがあります。メルツェンは、時代遅れになって消えたわけでは、まったくありません。

🌏 世界では今も、琥珀色がオクトーバーフェストの顔

面白いことに、本場ドイツが黄金色に切り替わった後も、アメリカをはじめ世界では「オクトーバーフェスト=琥珀色のメルツェン」というイメージがしっかり残りました。今でも世界中のブルワリーが、秋になると琥珀色のメルツェンを「オクトーバーフェストビール」として誇らしげに醸造しています。

そう、私たちが琥珀色を思い浮かべていたのも、きっとこの「世界に広まったメルツェン像」が刷り込まれていたから。メルツェンは本家ドイツを飛び出して、いまや世界の秋の定番に。そう考えると、なんだか誇らしいビールですよね。

 

🍺 飲みやすさの黄金色か、飲み応えの琥珀色か

結局これは、優劣ではなく好みの話です。たくさんの量を軽快に楽しみたいなら、黄金色のフェストビール。一杯をじっくり、麦の深いコクごと味わいたいなら、琥珀色のメルツェン。あの会場で感じた“重さ”も、裏を返せば、メルツェンが受け継いできた満足感の名残なのかもしれません。


◯ シュマッツがあえて「メルツェン」を選ぶ理由

実は、私たちシュマッツが自信を持っておすすめするオクトーバーフェストのビールは、この琥珀色のメルツェンです。

世界の主流が黄金色に流れていく中で、あえて伝統のメルツェンを選ぶ。それは、このスタイルにしか出せない麦の深いコクと、秋の夜にじっくり寄り添う飲み応えに、確かな価値があると信じているからです。シュマッツのラガーがなぜメルツェンなのか、その物語はラガー(メルツェン)のコラムで詳しく紹介しています。

 

▶︎ 二つの味を、家で飲み比べる

もちろん、「軽やかにゴクゴク」が好きな方には、本場の黄金色フェストビールに近いヘレスもご用意しています。あのアウグスティーナーで感動した“軽いのに旨い”の世界は、ヘレスで楽しんでいただけますよ。

黄金色のフェストビールと、琥珀色のメルツェン。オクトーバーフェスト200年の歴史が生んだ二つの味を、ご自宅で飲み比べてみるのはいかがでしょう? それぞれの個性がぐっと際立って、一杯が何倍も面白くなります。

🏠 飲み比べ用のビール選びはシュマッツのオンラインショップビール一覧からどうぞ。

🍽️ 本場さながらの賑わいの中で乾杯したくなったら、ぜひお近くのシュマッツ店舗へ。

ちなみに——なぜミュンヘンの祭りは「10月祭」なのに9月に始まるのか。その謎は別の回で解き明かしています。オクトーバーフェストの全体像が知りたい方は、こちらの完全ガイドからどうぞ。

Prost(プロースト)! 乾杯!

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