ドイツビールの適温は、だいたい6-10℃。日本でいつも飲んでいる、冷蔵庫でキンキンに冷やしたビールより、ほんの少しだけ高めです。
でも、この「ほんの少し」が大きいんです!ドイツで飲んで「あれ、ぬるい? でもおいしい!」と思った、あの感覚を、この記事ではできるだけ分かりやすくお伝えします。
日本のビールの冷たさを出発点に、ドイツビールが「ぬるい」と言われる理由、ドイツのケラー(地下のビール貯蔵庫)の話、おうちでの楽しみ方まで、順番にご紹介しますね!
💡日本のビールの冷たさは「ピルスナー×冷蔵庫」が基準
まずは日本のビールの話から。日本でふだん飲まれている大手メーカーのビールは、ほとんどが「ピルスナー」というタイプです。金色で、すっきり飲みやすいビール、といえばイメージしやすいと思います。
ピルスナーは、冷えているほうがおいしく感じやすいビールだと言われています。
そのピルスナーを冷やしているのが、おうちの冷蔵庫です。家庭用の冷蔵庫の冷蔵室は、だいたい2〜5℃が目安です(情報によって1-5℃などの幅があります)。スーパーでも、ビールは冷蔵ケースで冷やして並んでいるのが一般的ですよね。
サントリーのご案内では、おいしい温度は夏が4-6℃、冬が6-8℃。おうちの冷蔵庫なら、4時間くらい冷やせば飲み頃になるそうです。しかも同じご案内には、冷やしすぎると泡立ちが悪くなったり、麦の成分が固まって濁ったりして、おいしさが落ちてしまうこともある、と書かれています。
日本でも、「冷やせば冷やすほどいい」わけではないんです!
💡ドイツビールの適温は6〜10℃前後、数字は日本と近い

ここからがドイツです。ドイツビールの適温は、スタイルによって変わります。ピルスナーやヴァイツェン(小麦のビール)のように、日本でも親しまれている軽めのビールは、6-10℃くらい。一方、ドゥンケル(黒ビール)やボックのように、麦芽の甘みやコクが濃いビールは、9-13℃くらいと、ちょっと高めがおいしいと言われています。温度が上がるほど、甘みや、香ばしいロースト(焙煎)の香りが、深く感じられるからです。ビールが濃いほど、適温は高くなる! これも「ドイツのビールはぬるい」と言われる理由のひとつです。
日本の目安(夏4-6℃、冬6-8℃)と、ドイツのピルスナーの目安(6-8℃)は、数字だけ見ればほとんど同じです。それなのに、どうしてドイツビールは「ぬるい」と思われるんでしょう? 答えは、温度そのものより、温度による味の変わり方にあります。
キンキンに冷えたビールは、冷たい分だけ炭酸がたくさん溶け込んでいて、刺激が強く、喉越しがよくなります。そのかわり、香りは出にくくて、おとなしくなります。温度が上がると、刺激がやわらいで、麦芽やホップ、酵母の香りがふわっと立ち上がってきます。冷やしすぎないほうが、ビール本来の香りを感じやすいんです。
もうひとつは麦芽です。ドイツビールは麦芽に特徴があって、麦芽の甘みやコクが味のベースになっています。冷やしすぎるとこの甘みは感じにくいんですが、少し温度が上がると、麦芽の甘みを感じやすくなります。ぬるくなっても飲みやすいのは、このためです!
実際、ドイツのビールは、日本ほどキンキンじゃなくても、ちゃんとおいしい。グラスに注いで置いたままにしても、ぬるくなったビールが「ただ飲めちゃう」んです!むしろ飲みやすいな、と感じることもあります。とくにヘレスは、その傾向が強いビールです。
ヘレスは、麦芽のやさしい甘みと、控えめな苦みのバランスがいいビール。温度が上がると、麦の甘みがふんわり広がって、苦みも前に出すぎないので、飲み疲れしにくいんです。もちろんシュマッツの店舗では、冷たくお出ししています。冷たいうちの爽快感も、ぬるくなってからの甘みも、どちらもドイツビールの魅力です!ヘレスのことをもっと知りたい方は、南ドイツのビールの王様「ヘレス」完全ガイドもどうぞ。
日本では、ビールは冷えた状態を保って飲み切るもの、というイメージですよね。スーパーでも、多くはショーケースに並んでいます。それに対して、ドイツのスーパーには、冷蔵庫に入って売られているビールもあれば、ケース(箱)のまま平置きされているビールもあります。平置きのビールは、家に持ち帰ってから、飲む分だけ冷やして飲みます。この習慣が、「冷えていなくて当たり前」という感覚につながっているんだと思います。ドイツではビールが日常の飲み物なので、温度が少しずつ上がっていくことも気にせず、そのまま飲み続けます。冷やし加減を決めるのは、売り場ではなく、飲む人なんです!
💡「約8℃」が基準になった?ドイツのケラー文化

南ドイツのバイエルン州の北のほう、フランケン地方には、丘の斜面を掘ってつくった洞窟のようなビールの貯蔵庫(ケラー)が、あちこちにあります。深いところにあるので、冷やす機械がなくても、1年を通して約8℃に保たれる、と言われています(貯蔵庫ごとに温度は違うので、諸説あります)。この温度が、ラガー(低い温度でじっくり発酵させるビール)を寝かせるのにちょうどよかったんです。いまのケラービアを造る醸造所でも、発酵は8〜10.5℃、寝かせるのは冬で約2℃、夏で約5℃と、低い温度で造っている例があります(醸造所によって違います)。ケラーのビールは、低い温度でじっくり寝かせて生まれて、そのまま「ちょうどいい涼しさ」で注がれてきたんですね!
ケラーの近くには、やがてビアガーデンができました。地元の人がいまも「ケラーに行こう」と言うのは、その名残です。ケラービアという名前も、そのまま「地下貯蔵庫のビール」という意味なんです!ドイツ南部には「ケラーの森」と呼ばれる場所があって、栗の木の木陰に、古い石造りのビール貯蔵庫が23も並んでいるそうです。伝統的なドイツビールは、こうした「ちょうどいい涼しさ」のなかで育ってきた、とも言えます。冷蔵庫でキンキンに冷やす文化とは、スタートが違うんです!
ちなみにバイエルンには、ビールを造っていい季節が決まっていた時代がありました。9月29日から翌年の4月23日までは造ってOK、そのあとの約5か月、つまり暑い夏は禁止、というルールです。このルールは「1539年のバイエルンの規則」とも「1553年のアルブレヒト5世のおふれ」とも言われていて、年号ははっきりしません(諸説あります)。
理由は、夏は火事の危険が高かったことと、ラガーを造るには10℃より低い温度が必要だったことだと言われています。でも、夏にもビールを飲みたい! そこで醸造家たちは、冬に切り出した氷を貯蔵庫に詰めて、貯蔵庫を深く掘って、上には日陰をつくる栗の木を植えました。さらに、春先にアルコールが少し高めの、夏を越せるビールを仕込む習慣も生まれて、これがメルツェンの原型と言われています(くわしくは【世界評価92点】シュマッツ「ラガー」の正体は伝統のメルツェンへ)。ラガーという言葉がドイツ語の「貯蔵」と結びつけて語られるのも、この歴史と関係しているんです!(語源には諸説あります)。
💡 家で試せる、ドイツ流の楽しみ方

最後は、おうちでできるドイツ流の楽しみ方です。やり方はかんたん。冷蔵庫から出して、すぐに開けずに、10分ほど常温に置く。それだけです!ひと口飲んだらグラスを置いて、おしゃべりしながらゆっくり。温度の変化を感じてみてください。
試すときは、1本のビールを、時間を変えて3回飲み比べるのがおすすめです。注いだ直後は、冷たさと炭酸の爽快感。少し置くと、麦の甘みがやわらかく広がって、香りが立ち上がってきます。最後の数口は、ぬるくなったビールの飲みやすさを感じてみてください。ヘレスなら、ぬるくなってもすっと飲み進められます。涼しい部屋で試して、自分にとってちょうどいい温度を見つけてみましょう!
おすすめは、小麦の旨みやコクのあるビールで試すこと(オンラインショップのビール一覧から選べます)。ヴァイツェンなら、ひと口目は爽快に、後半はバナナのような香りがふわっと開いてきます。飲み方のコツは、ご自宅でシュマッツビールを楽しむ飲み方のコツでも紹介しています。
ドイツビールの適温は「6〜10℃前後」。でも、本当の答えは、ひと杯のなかで、温度と一緒に変わっていく味を楽しむことです。冷たいのも、ぬるいのも、そのビールの個性。ドイツのビールって、知れば知るほど、おもしろいんです!
本場ドイツのビールの楽しみ方は、こちらの記事でもくわしく紹介しています。ドイツビールって何だろう?もぜひ。
シュマッツのオンラインショップを見る → https://www.schmatz.jp/pages/online-store
店舗・ご予約はこちら → https://www.schmatz.jp/pages/location