オクトーバーフェストの楽しみ方が変わる、ビールの選び方──迷ったら「スタイル」で選ぶ

オクトーバーフェストの楽しみ方が変わる、ビールの選び方──迷ったら「スタイル」で選ぶ

オクトーバーフェストの楽しみ方が変わる、ビールの選び方──迷ったら「スタイル」で選ぶ

 

秋になると、日本でも各地に長いテーブルが並びはじめます。

オクトーバーフェスト。ドイツから届いた樽生ビールを、外の風に当たりながら飲める、1年でいちばん贅沢な時期です。9月から10月にかけて、各地の会場が順番に開いていきます。

そこで、ひとつだけお伝えしたいことがあります。何をどの順番で飲むかで、同じ会場、同じ時間の心地よさがけっこう変わります。 選び方を少し知っておくだけで、その日の1杯がぐっと美味しくなるんです。

おすすめは、「スタイル」で選ぶこと。ドイツビールを毎日扱っている私たちから、その組み立て方をお話しさせてください。

 

💡 迷ったら、スタイルで選ぶのがおすすめ

カウンターの前に立つと、名前がずらりと並んでいて、つい「とりあえず生で」と言いたくなりますよね。

好きな醸造所を見つけて名前で選ぶのは、ビールのいちばん楽しい部分だと思います。ただ、会場に並ぶのはドイツ各地の醸造所のビールで、ドイツでは何百年も続く地元の定番でも、日本ではまだ名前が広く知られていないものも多いんです。まだなじみがないうちは、名前から味を思い浮かべるのが難しい。私たちも、初めて見るドイツの醸造所名だとそうです。

そういうときは、スタイル名を探してみてください。

ヘレス。フェストビア。ヴァイツェン。デュンケル。ボック。この単語のどれかが、たいてい商品名の近くに書かれています。ドイツビールは、このスタイルの名前が味の設計図そのものなんです。名前を知らない醸造所のビールでも、スタイルが分かれば味の見当がつきます。 これがドイツビールのいちばん便利なところだと思います。

 

💡「色」「香り」「重さ」の3つだけ覚えれば足りる

スタイルは何十種類もありますが、会場で必要な区別は3つで足ります。色が明るいか暗いか。香りが控えめか華やかか。飲み口が軽いか重いか。

たとえばヘレスは、明るくて、香りは控えめで、軽い。ボックは、暗くて、香りが濃く、重い。この座標のどこにいるかが分かれば、選択を間違えません。

スタイルごとの全体像はドイツビールって何だろう?にまとめています。行く前に眼を通しておくと、会場の黒板が急に読めるようになって面白いですよ。

 

🍻 1杯目は、明るいラガーで会場の実力を測る

最初の1杯は、ヘレスかフェストビアをおすすめします。理由は2つあって、1つは9月の夕方にいちばん心地よいから。もう1つは、その会場のビールの状態がいちばん正直に出るからです。

明るいラガーは、香りで飾るところがありません。麦芽の甘み、ホップのかすかな苦み、炭酸のきれ。この3つだけで立っているビールなので、樽の鮮度や注ぎ方の丁寧さが、そのまま味に出ます。1杯目にこれを飲むと、その日の会場との付き合い方が決まります。

 

🍻 ヘレス──南ドイツの日常のビール

ヘレス(Helles)はドイツ語の「明るい」から来た名前で、ミュンヘンを中心とする南ドイツでいちばん飲まれているビールです。

淡い金色。香りは穂の香りのように控えめで、口に含むと麦芽のやわらかい甘みが広がり、すっと引いていく。苦みは輪郭を作る程度にしか使いません。度数はおおむね5%前後。

「特徴がない」と言われることがありますが、逆です。濃い味で隠すことができないから、いちばん難しいビールなんです。だから醸造所の実力がよく分かる。ヘレスそのものの話は南ドイツのビールの王様「ヘレス」完全ガイドで詳しくお話ししています。

 

🍻 フェストビア──見た目は似ていて、中身は強い

もし「フェストビア(Festbier)」と書かれていたら、それはお祭りのためのビールです。

見た目はヘレスと同じような明るい金色。飲み口も軽やかです。ところが麦芽の量が多く仕込まれていて、度数は5.8〜6.2%あたりまで上がっています。ヘレスより1杯あたり1割か2割、強い。

ちなみに本場のオクトーバーフェストで出されるビールには、発酵前の麦汁の濃さ(麦汁濃度)を13.5%以上にするという決まりがあります。麦の量が多いほど、糖が多く、アルコールも上がる。「軽やかなのに強い」の正体は、この麦の量なんですね。

これが曲者で、軽やかに飲めるのに酔いの立ち上がりが速い。大きなジョッキでフェストビアを2杯飲むと、思ったより効きます。美味しいので止まらないんですよね(笑)。

ちなみに、お祭りのビールがかつての濃い「メルツェン」から、いまの明るいフェストビアへ移っていった経緯は、それ自体がなかなか面白い話です。こちらの記事にまとめました。

 

🍻 2杯目から締めまで、香りと色を深めていく

明るいラガーで舌が整ったところで、次は香りのあるビールへ移ります。ここでヴァイツェンが来ると、会場の空気が変わります。

バナナとクローブの香りは、酵母がつくっている

ヴァイツェン(Weizen)は小麦を使った白いビールです。グラスに注ぐと白く濁って、泡が高く立ち、鼻を近づけるとバナナのような甘い香りと、クローブのようなスパイシーな香りが上がってきます。

面白いのは、この香りは果物も香辛料もいっさい使っていないということ。ヴァイツェン専用の酵母が発酵中につくり出す成分(バナナの香りはエステル、クローブの香りはフェノール)です。小麦とこの酵母の組み合わせでしか出ない香りで、だからヴァイツェンは他のどのビールとも似ていません。

苦みはほとんどありません。ビールの苦みが苦手な方をお連れするなら、まずこれです。度数は5%台のものが多いのに飲み口が丸いので、するすると進みます。

 

🍻 ヘフェとクリスタル──濁っているかどうかは好みの分かれ目

同じヴァイツェンでも2種類あります。

ヘフェヴァイツェンは酵母(Hefe)を残したもので、白く濁り、香りが豊かで口当たりがふっくら。クリスタルヴァイツェンは酵母を濾したもので、澄んだ金色でシャープに切れます。

会場で「白ビール」と言われて出てくるのは、たいていヘフェのほうです。もしクリスタルを見つけたら、少し珍しいので試してみてください。ヴァイツェンをもっと深く知りたい方は人気No.1ヴァイツェンの魅力を徹底解剖へ。

そして夜が深くなって、料理も一通り食べ終わったころ。ここで色の濃いビールに移ると、その日がきれいに閉じます。

 

🍻 デュンケルの香ばしさは、「甘い」のではない

デュンケル(Dunkel)は「暗い」という意味。栗色から黒に近い褐色で、見た目に重そうですが、飲むと意外なほどすっきりしています。

香りはトーストしたパンの耳、あるいはカラメル。これは麦芽を焙煎する過程で起きる反応(肉を焼いたときの焼き目と同じ、メイラード反応)でできる香ばしさです。甘い成分が多いのではなく、香ばしい香りが甘さのように感じられているわけです。

だから、脂のある料理と抜群に合います。焼いた肉、燻した肉、チーズ。デュンケルを1杯持って肉料理に向かうと、両方の味が持ち上がります。

 

🍻 ボックは、飲むパンだった

「ボック(Bock)」と書かれていたら、覚悟して頼んでください。

麦芽をたっぷり使って仕込む濃厚なビールです。ドイツではボックと名乗るために麦汁濃度16%以上、さらに濃いドッペルボックは18%以上と決められていて、度数はボックで6%超、ドッペルボックなら7%を超えてきます。

面白い目安があって、度数はだいたい麦汁濃度の3分の1になります。16%なら5%台後半から6%、18%なら6%台後半から7%。麦の量がそのまま強さになる、というのが数字でも見えるわけです。

かつて修道士が断食の期間にこれを飲んで栄養を取っていたと言われていて、「液体のパン」と呼ばれた歴史があります。

甘やかで、余韻が長い。1杯で満足してしまう強さです。締めの1杯、あるいは冷えてきた10月の夜に。


💡 その日の自分に合わせて選ぶ

ここまでの並べ方は、明るいものから濃いものへ、軽いものから重いものへという原則でできています。順番の考え方は飲み比べにおすすめの順番でも書いていますが、会場でもそのまま通用します。

ただ、原則より優先していいものが2つあります。気温と、自分の体です。

暑い日と、冷える夜

9月の会場はまだ暑い日があります。そういう日は原則を忘れて、明るくて軽いものを飲み続けて構いません。ヘレスをもう1杯、が正解の日もあります。

10月の夜は冷えます。デュンケルやボックの重さが、その気温では心地よさに変わります。同じビールが、日によって違う顔をするんですね。

 

🍺 度数を見る、ラードラーを覚えておく

会場で大きなサイズを頼むなら、度数の確認は本当にしておいたほうがいいです。6%のビールを1リットル飲むというのは、そこそこの量のアルコールを飲むということです。

そこで覚えておいてほしいのがラードラー(Radler)。ビールをレモネードで割った飲み物です。半分ほど割るので度数はもとのビールのおよそ半分まで下がり、柑橘の酸味で口の中がさっぱりします。ドイツでは昼から飲むための普通の選択肢です。合間にこれを1杯挟むと、夜まで美味しく飲めます。

アルコールを控えたい日には、ドイツのノンアルコールビールを。ドイツはこのジャンルの完成度が非常に高くて、麦の味がしっかり残っています。飲まない人が我慢する場所にしないのが、あの祭りの流儀だと思います。

 

🎪 今年の秋、どこで飲むか

日本のオクトーバーフェストは、秋のあいだ各地で順番に開かれます。会場ごとに会期がずれるので、予定に合わせて選べるのがいいところ。

なかでも歴史が長いのが横浜赤レンガ倉庫の会場です。2026年は 9月18日(金)から10月4日(日)まで、横浜赤レンガ倉庫イベント広場で開かれます。時間は平日12:00〜21:30、土日祝は11:00〜21:30(初日の9月18日のみ15:00〜、ラストオーダーは21:00)。入場料は500円で、中学生以下は無料です。

ここで飲めるドイツの有機ビール醸造所リーデンブルガーについては、こちらの記事にまとめました。どのスタイルがあるかを先に知っておくと、当日の1杯目が決めやすくなります。

混雑を避けたいなら、平日の早い時間が狙い目です。長いテーブルは相席が基本なので、混んでくると席の確保が難しくなります。平日の開場すぐの時間なら、好きな席に座れて、注いでくれる方にビールの話を聞く余裕もあります。

昼のうちの、まだ人の少ない会場の空気。あれが実はいちばん好きだという人も少なくありません。

 

💡 スタイルで選べるようになったら、その先へ

ここから先は、次に会場へ行くときの話です。

スタイルで選べるようになると、あるとき気づきます。同じ「ヘレス」なのに、味が違う。 水の硬度、麦芽の種類、仕込みの手順、酵母。どれも各醸造所が代々守ってきたもので、同じスタイル名でも仕上がりが変わるんです。

覚える必要はまったくありません。ただ、気に入った1杯の醸造所名だけ写真に撮っておくと、次に会場やお店で名前を見かけたときに「あ、これだ」となります。名前が味と結びつく瞬間から、ビール選びは一気に楽しくなります。

 

💡 飲み比べセットは、こう使うと面白い

会場に数種類が並ぶ飲み比べセットがあったら、スタイルを揃えて醸造所で比べるか、醸造所を揃えてスタイルで比べるか、どちらかに決めて頼んでみてください。

やみくもに5種類飲むより、違いがはっきり分かります。「この醸造所のヘレスは麦の甘みが太い」「こっちは苦みで締めている」。そこまで見えてくると、次に自分が何を頼みたいかが自然に決まります。

もし「ケラービア」「ツヴィッケル」と書かれたものに出会えたら、それは濾過をしていないビールです。数はそう多くないので、見つけたら迷わずどうぞ。

 

🍺 会場でも、お店でも、家でも

私たちシュマッツは、2026年9月1日から10月31日まで Schmatz Oktoberfest 2026 を開催します。

レストランでは、この期間だけのメニューとドイツのビールをご用意します。今日お話しした選び方は、そのままお店でも使えます。迷ったらスタッフに「軽いところから始めたい」と言ってみてください。話が早いです。お店は店舗一覧からご覧ください。

会場に行く時間がとれない年もありますよね。そんなときは家でどうぞ。数量限定のオクトーバーフェスト限定セットには、ドイツから届いた限定ビールが入っています。明るいものから濃いものへ、順番に開けていく夜はかなり楽しいです。

🛒 シュマッツオンラインショップはこちら

オクトーバーフェストというお祭りそのものについては、歴史から本場の様子まで完全ガイドにまとめています。

今年の秋、どこかの長いテーブルでお会いできたら嬉しいです。Prost!

 

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