コラム
本場を訪れたシュマッツが選ぶ、家でオクトーバーフェストを再現するビールと楽しみ方【2026年版】
本場を訪れたシュマッツが選ぶ、家でオクトーバーフェストを再現するビールと楽しみ方【2026年版】 シリーズもいよいよ最終回。「本場の楽しみ方」を、おうちへ 長らくお付き合いいただいた、シュマッツのオクトーバーフェストシリーズ。いよいよ最終回です。 私たちシュマッツは、本場ミュンヘンのオクトーバーフェストに実際に足を運び、本場の雰囲気を感じてきました。テレージエンヴィーゼの途方もない熱気、木樽から注がれる別格の一杯、湯気を立てるソーセージ……。そして横浜赤レンガでは、ドイツの有機ビール醸造所リーデンブルガーの個性ゆたかなビールにも出会えます。 そんな体験を重ねるうちに、ふと思うんです。「この楽しさ、家でも味わえたら最高なのに」と。 実は、できるんです。今日は、本場を知る私たちが選ぶ「おうちでオクトーバーフェストを再現する方法」を、ビール・グラス・料理の3つのカギに分けてご紹介します。2026年の秋は、自宅の食卓をビアテントに変えてみませんか? ひらめき家でオクトーバーフェストを再現する、3つのカギ 大げさな準備は要りません。ポイントはたった3つ。**「ビール」「グラス」「料理」**です。 この3つさえ押さえれば、いつものリビングが、ぐっと本場の空気に近づきます。順番に見ていきましょう。 🗝️ ① ビール選び:本場の“あの味”を、家でも 主役はやっぱりビール。どれを選ぶかで、再現度は大きく変わります。 本場の醸造所と組んだ、秋冬限定の4本 横浜赤レンガで出会えるリーデンブルガー。その本場の実力を、家でもじっくり味わう方法があります。 私たちシュマッツが、あのリーデンブルガー醸造所とタッグを組んでお届けする、秋冬限定の4本です。バイエルンで醸した本物を、シュマッツが選び抜いてラベルを巻いた“ダブルブランド”の特別なビール。「今日はドイツを旅しよう♪」を合言葉に、おうちで小さなドイツ旅行を楽しめます。 軽やかに楽しみたいなら、柑橘と青草が香る無濾過のケラーピルス(4.7%)や、レモンと白桃が弾ける低アルのセッションIPA(3.8%)。しっかり飲みたい日は、古代小麦エンマーのふくよかさに、トロピカルなホップが躍るババリアンIPA(6.5%)。そして特別な夜には、同じく古代小麦エンマーを使い、チョコやコーヒーを思わせる香りで「Porter of the Year」(Meininger 2021)に輝いた漆黒のポーター(6.9%)。どれもバイエルンの有機・無濾過です。これらは私たちシュマッツのオンラインショップや店舗のメニューでご用意しています。 シュマッツのビールで、“フェスト気分”を盛り上げる🍻 もちろん、私たちシュマッツ自慢のビールも、オクトーバーフェストにぴったりです。 🗝️② グラスと注ぎ方で、味は変わる 「ビールなんて、どのグラスでも同じでしょ?」──いえいえ、これが意外と違うんです。 ビールは、グラスの形で香りの立ち方も、泡のもち方も変わります。本場のジョッキ気分を出したいなら、大ぶりのグラスを。白ビールなら背の高いヴァイツェングラスを選ぶと、雰囲気がぐっと高まります。 そして注ぎ方も大事。少し高い位置から勢いよく注いで、こんもりとした泡のフタをつくる。この泡が、ビールの酸化を防いで、最後の一口まで美味しく保ってくれるんです。本場流の楽しみ方は本場ドイツのビールの楽しみ方のコラムでも紹介しています。...
本場を訪れたシュマッツが選ぶ、家でオクトーバーフェストを再現するビールと楽しみ方【2026年版】
本場を訪れたシュマッツが選ぶ、家でオクトーバーフェストを再現するビールと楽しみ方【2026年版】 シリーズもいよいよ最終回。「本場の楽しみ方」を、おうちへ 長らくお付き合いいただいた、シュマッツのオクトーバーフェストシリーズ。いよいよ最終回です。 私たちシュマッツは、本場ミュンヘンのオクトーバーフェストに実際に足を運び、本場の雰囲気を感じてきました。テレージエンヴィーゼの途方もない熱気、木樽から注がれる別格の一杯、湯気を立てるソーセージ……。そして横浜赤レンガでは、ドイツの有機ビール醸造所リーデンブルガーの個性ゆたかなビールにも出会えます。 そんな体験を重ねるうちに、ふと思うんです。「この楽しさ、家でも味わえたら最高なのに」と。 実は、できるんです。今日は、本場を知る私たちが選ぶ「おうちでオクトーバーフェストを再現する方法」を、ビール・グラス・料理の3つのカギに分けてご紹介します。2026年の秋は、自宅の食卓をビアテントに変えてみませんか? ひらめき家でオクトーバーフェストを再現する、3つのカギ 大げさな準備は要りません。ポイントはたった3つ。**「ビール」「グラス」「料理」**です。 この3つさえ押さえれば、いつものリビングが、ぐっと本場の空気に近づきます。順番に見ていきましょう。 🗝️ ① ビール選び:本場の“あの味”を、家でも 主役はやっぱりビール。どれを選ぶかで、再現度は大きく変わります。 本場の醸造所と組んだ、秋冬限定の4本 横浜赤レンガで出会えるリーデンブルガー。その本場の実力を、家でもじっくり味わう方法があります。 私たちシュマッツが、あのリーデンブルガー醸造所とタッグを組んでお届けする、秋冬限定の4本です。バイエルンで醸した本物を、シュマッツが選び抜いてラベルを巻いた“ダブルブランド”の特別なビール。「今日はドイツを旅しよう♪」を合言葉に、おうちで小さなドイツ旅行を楽しめます。 軽やかに楽しみたいなら、柑橘と青草が香る無濾過のケラーピルス(4.7%)や、レモンと白桃が弾ける低アルのセッションIPA(3.8%)。しっかり飲みたい日は、古代小麦エンマーのふくよかさに、トロピカルなホップが躍るババリアンIPA(6.5%)。そして特別な夜には、同じく古代小麦エンマーを使い、チョコやコーヒーを思わせる香りで「Porter of the Year」(Meininger 2021)に輝いた漆黒のポーター(6.9%)。どれもバイエルンの有機・無濾過です。これらは私たちシュマッツのオンラインショップや店舗のメニューでご用意しています。 シュマッツのビールで、“フェスト気分”を盛り上げる🍻 もちろん、私たちシュマッツ自慢のビールも、オクトーバーフェストにぴったりです。 🗝️② グラスと注ぎ方で、味は変わる 「ビールなんて、どのグラスでも同じでしょ?」──いえいえ、これが意外と違うんです。 ビールは、グラスの形で香りの立ち方も、泡のもち方も変わります。本場のジョッキ気分を出したいなら、大ぶりのグラスを。白ビールなら背の高いヴァイツェングラスを選ぶと、雰囲気がぐっと高まります。 そして注ぎ方も大事。少し高い位置から勢いよく注いで、こんもりとした泡のフタをつくる。この泡が、ビールの酸化を防いで、最後の一口まで美味しく保ってくれるんです。本場流の楽しみ方は本場ドイツのビールの楽しみ方のコラムでも紹介しています。...
テントに入って最初に驚いたのは、味ではなく音だった──オクトーバーフェストの音楽と《Ein P...
テントに入って最初に驚いたのは、味ではなく音だった──オクトーバーフェストの音楽と《Ein Prosit》 ミュンヘンのテレージエンヴィーゼ(Theresienwiese)。オクトーバーフェストの会場に着いて、私たちシュマッツが最初に面食らったのは、ビールの味ではありませんでした。 音です。 テントの重い扉を開けた瞬間、隣に立っている人の声が聞こえなくなりました。何か言っている、口が動いている、でも届かない。ビールを注文するまでの数分、私たちはただ立ちすくんでいました。 オクトーバーフェストの写真はたくさん出回っています。でも、あの音は写真に写りません。今日はその話を。 ◯ 扉を開けた瞬間、声が届かなくなった テントの外は、思ったよりも静かでした。屋台の呼び込みと観覧車のモーター音があるくらい。 その扉を開けると、世界が切り替わります。壁のように音が来る、という言い方がいちばん近い。耳が痛いというのとは違って、演奏と何千人の話し声が、振動としてそのまま体に届いてくるんです。 「うるさい」ではなく、「濃い」 最初は単純にうるさいのだと思いました。けれど数分立っていると、うるさいという言葉が合っていないことに気づきます。 音が層になっているんです。いちばん下に何千人の話し声が敷いてある。その上に食器とジョッキがぶつかる硬い音。さらに上に、金管の旋律が乗っている。この3層が同時に鳴っていて、どれかを聞こうとすると他が消える。 大テントは、屋内と屋外をあわせて8,000席から9,000席という規模のものがあります。その人数の会話が同時進行している空間に、生演奏が加わる。音が濃くなるのも当然だと、あとから納得しました。 ◯ 音の出どころは、天井ではなく中央だった 大きな会場に入ると、私たちはつい天井のスピーカーを探してしまいます。 ところがここでは、音は上から降ってきません。フロアの中央から来ます。長いテーブルの海のちょうど真ん中に演奏台が据えられていて、そこに生のバンドが立っているんです。 舞台と客席が、分かれていない これがオクトーバーフェストの音の設計だと思いました。 演奏者はお客さんに360度囲まれていて、テーブルはその周りに放射状に広がっている。前を向いて座る客席がなくて、音の中心に、飲んでいる人たちがいる。 だから「ステージを見る」という姿勢になりません。演奏はどこか一方から届くものではなく、自分がいる場所そのものが鳴っている。この構造が、あとで書く「参加している感じ」の正体だったと思います。 ◯ 演奏台にいたのは、ロックバンドのような人たちだった オクトーバーフェストの音楽といえば、管楽器の楽団を思い浮かべる方が多いと思います。ブラスカペレ(Blaskapelle)。ドイツ語の Blas は「吹く」、Kapelle は「楽団」で、バイエルンの村祭りやビアガーデンでずっと鳴ってきた編成です。...
テントに入って最初に驚いたのは、味ではなく音だった──オクトーバーフェストの音楽と《Ein P...
テントに入って最初に驚いたのは、味ではなく音だった──オクトーバーフェストの音楽と《Ein Prosit》 ミュンヘンのテレージエンヴィーゼ(Theresienwiese)。オクトーバーフェストの会場に着いて、私たちシュマッツが最初に面食らったのは、ビールの味ではありませんでした。 音です。 テントの重い扉を開けた瞬間、隣に立っている人の声が聞こえなくなりました。何か言っている、口が動いている、でも届かない。ビールを注文するまでの数分、私たちはただ立ちすくんでいました。 オクトーバーフェストの写真はたくさん出回っています。でも、あの音は写真に写りません。今日はその話を。 ◯ 扉を開けた瞬間、声が届かなくなった テントの外は、思ったよりも静かでした。屋台の呼び込みと観覧車のモーター音があるくらい。 その扉を開けると、世界が切り替わります。壁のように音が来る、という言い方がいちばん近い。耳が痛いというのとは違って、演奏と何千人の話し声が、振動としてそのまま体に届いてくるんです。 「うるさい」ではなく、「濃い」 最初は単純にうるさいのだと思いました。けれど数分立っていると、うるさいという言葉が合っていないことに気づきます。 音が層になっているんです。いちばん下に何千人の話し声が敷いてある。その上に食器とジョッキがぶつかる硬い音。さらに上に、金管の旋律が乗っている。この3層が同時に鳴っていて、どれかを聞こうとすると他が消える。 大テントは、屋内と屋外をあわせて8,000席から9,000席という規模のものがあります。その人数の会話が同時進行している空間に、生演奏が加わる。音が濃くなるのも当然だと、あとから納得しました。 ◯ 音の出どころは、天井ではなく中央だった 大きな会場に入ると、私たちはつい天井のスピーカーを探してしまいます。 ところがここでは、音は上から降ってきません。フロアの中央から来ます。長いテーブルの海のちょうど真ん中に演奏台が据えられていて、そこに生のバンドが立っているんです。 舞台と客席が、分かれていない これがオクトーバーフェストの音の設計だと思いました。 演奏者はお客さんに360度囲まれていて、テーブルはその周りに放射状に広がっている。前を向いて座る客席がなくて、音の中心に、飲んでいる人たちがいる。 だから「ステージを見る」という姿勢になりません。演奏はどこか一方から届くものではなく、自分がいる場所そのものが鳴っている。この構造が、あとで書く「参加している感じ」の正体だったと思います。 ◯ 演奏台にいたのは、ロックバンドのような人たちだった オクトーバーフェストの音楽といえば、管楽器の楽団を思い浮かべる方が多いと思います。ブラスカペレ(Blaskapelle)。ドイツ語の Blas は「吹く」、Kapelle は「楽団」で、バイエルンの村祭りやビアガーデンでずっと鳴ってきた編成です。...
横浜赤レンガのオクトーバーフェストで出会える「Riedenburger」──知る人ぞ知る、ドイ...
横浜赤レンガのオクトーバーフェストで出会える「Riedenburger」──知る人ぞ知る、ドイツ有機ビール醸造所の物語 今年も9月、横浜赤レンガに「本場の秋」がやってくる🍻🍂 潮風の気持ちいい横浜・みなとみらい。あの赤レンガ倉庫の前に、今年もずらりとビアテントが並ぶ季節がやってきます。 ヨコハマ オクトーバーフェスト 2026。会期は9月18日(金)から10月4日(日)までの17日間です。ドイツの楽団による生演奏、巨大なジョッキ、ソーセージの香り……このイベントだけで「ちょっとミュンヘンに来た気分」が味わえてしまうんですよね。 ちなみに、日本で大規模なオクトーバーフェストを初めて開いたのが、実はこの横浜赤レンガなんです。2003年、たった5日間の開催に20万人が詰めかけたのが始まり。以来20年以上にわたって「本場の雰囲気」にこだわり続けてきた、いわば日本のオクトーバーフェストの“元祖”です。 そんな横浜の会場で、今年ぜひ探してほしいビールがあります。それが、ドイツでも知る人ぞ知る有機ビールの醸造所、**リーデンブルガー(Riedenburger)**です。 ◯ 会場でぜひ探してほしい「リーデンブルガー(Riedenburger)」 オクトーバーフェストでビールを出せるのは、本場ミュンヘンでは6つの大醸造所だけ。でも、横浜のように世界中のビールが集まる場では、もっと幅広い、個性的な造り手のビールに出会えるのが楽しいところです。 その中でもリーデンブルガーは、ちょっと特別な存在。なぜなら、**つくっているビールがすべて「オーガニック(有機)」**だからです。 「オーガニックビール」って、実はすごいことなんです! 野菜や卵に「有機」があるのは知っていても、「有機ビール」と聞くとピンとこない方も多いかもしれません。 有機ビールとは、ざっくり言えば、化学合成の農薬や肥料に頼らずに育てた大麦・ホップだけでつくったビールのこと。畑の段階から認証を受け、醸造の工程まで一貫して基準を守らないと名乗れません。手間もコストもかかるので、世界を見渡してもまだまだ少数派です。 その「茨の道」を、リーデンブルガーは30年以上前から本気で歩んできました。ドイツビールの奥深さを語るうえで、これは外せない物語なんです。 ◯ 創業1756年。8代続く、小さな町の醸造所 リーデンブルガーがあるのは、バイエルン州のアルトミュール谷にある、リーデンブルクという小さな町。豊かな自然に囲まれた、のどかな田舎です。 創業はなんと1756年。江戸時代のまんなか、日本ではまだちょんまげを結っていた頃から、この一族はビールを造り続けてきました。経営はずっとクリーガー家が受け継ぎ、現在は8代目。気の遠くなるような時間、同じ町で、同じ家族が、ひたすら美味しいビールを追いかけてきたわけです。 年間の生産量は約3万ヘクトリットル。世界のビール大手と比べれば、本当に小さな醸造所です。それでも、その実力はドイツ国内にとどまらず、今では世界17か国へと輸出されています。「小さいけれど、本物」。この感じ、私たちシュマッツが大切にしているドイツビールの魅力そのものなんですよね。 ◯ なぜ「有機ビールの先駆け」と呼ばれるのか リーデンブルガーが特別なのは、古いからだけではありません。ドイツの有機ビールの草分けとして、業界の先頭を走ってきた歴史があるからです。 まだ誰もやっていなかった「全部、有機」への挑戦 時は1990年代のはじめ。当時、ビールを「有機で」なんて発想は、ドイツでもごくわずかな人しか口にしていませんでした。 そんな中、リーデンブルガーは1992年に初の有機認証(Bioland)ビールを世に出し、1994年には全製品を有機の造り方へ完全に切り替えます。包括的な環境コンセプトを掲げてここまで踏み込んだのは、バイエルン州ではこの醸造所が最初だったと言われています。 今でこそ「サステナブル」「オーガニック」は当たり前の言葉ですが、30年以上も前にここまで舵を切ったというのは、本当に先見の明があったとしか言いようがありません。...
横浜赤レンガのオクトーバーフェストで出会える「Riedenburger」──知る人ぞ知る、ドイ...
横浜赤レンガのオクトーバーフェストで出会える「Riedenburger」──知る人ぞ知る、ドイツ有機ビール醸造所の物語 今年も9月、横浜赤レンガに「本場の秋」がやってくる🍻🍂 潮風の気持ちいい横浜・みなとみらい。あの赤レンガ倉庫の前に、今年もずらりとビアテントが並ぶ季節がやってきます。 ヨコハマ オクトーバーフェスト 2026。会期は9月18日(金)から10月4日(日)までの17日間です。ドイツの楽団による生演奏、巨大なジョッキ、ソーセージの香り……このイベントだけで「ちょっとミュンヘンに来た気分」が味わえてしまうんですよね。 ちなみに、日本で大規模なオクトーバーフェストを初めて開いたのが、実はこの横浜赤レンガなんです。2003年、たった5日間の開催に20万人が詰めかけたのが始まり。以来20年以上にわたって「本場の雰囲気」にこだわり続けてきた、いわば日本のオクトーバーフェストの“元祖”です。 そんな横浜の会場で、今年ぜひ探してほしいビールがあります。それが、ドイツでも知る人ぞ知る有機ビールの醸造所、**リーデンブルガー(Riedenburger)**です。 ◯ 会場でぜひ探してほしい「リーデンブルガー(Riedenburger)」 オクトーバーフェストでビールを出せるのは、本場ミュンヘンでは6つの大醸造所だけ。でも、横浜のように世界中のビールが集まる場では、もっと幅広い、個性的な造り手のビールに出会えるのが楽しいところです。 その中でもリーデンブルガーは、ちょっと特別な存在。なぜなら、**つくっているビールがすべて「オーガニック(有機)」**だからです。 「オーガニックビール」って、実はすごいことなんです! 野菜や卵に「有機」があるのは知っていても、「有機ビール」と聞くとピンとこない方も多いかもしれません。 有機ビールとは、ざっくり言えば、化学合成の農薬や肥料に頼らずに育てた大麦・ホップだけでつくったビールのこと。畑の段階から認証を受け、醸造の工程まで一貫して基準を守らないと名乗れません。手間もコストもかかるので、世界を見渡してもまだまだ少数派です。 その「茨の道」を、リーデンブルガーは30年以上前から本気で歩んできました。ドイツビールの奥深さを語るうえで、これは外せない物語なんです。 ◯ 創業1756年。8代続く、小さな町の醸造所 リーデンブルガーがあるのは、バイエルン州のアルトミュール谷にある、リーデンブルクという小さな町。豊かな自然に囲まれた、のどかな田舎です。 創業はなんと1756年。江戸時代のまんなか、日本ではまだちょんまげを結っていた頃から、この一族はビールを造り続けてきました。経営はずっとクリーガー家が受け継ぎ、現在は8代目。気の遠くなるような時間、同じ町で、同じ家族が、ひたすら美味しいビールを追いかけてきたわけです。 年間の生産量は約3万ヘクトリットル。世界のビール大手と比べれば、本当に小さな醸造所です。それでも、その実力はドイツ国内にとどまらず、今では世界17か国へと輸出されています。「小さいけれど、本物」。この感じ、私たちシュマッツが大切にしているドイツビールの魅力そのものなんですよね。 ◯ なぜ「有機ビールの先駆け」と呼ばれるのか リーデンブルガーが特別なのは、古いからだけではありません。ドイツの有機ビールの草分けとして、業界の先頭を走ってきた歴史があるからです。 まだ誰もやっていなかった「全部、有機」への挑戦 時は1990年代のはじめ。当時、ビールを「有機で」なんて発想は、ドイツでもごくわずかな人しか口にしていませんでした。 そんな中、リーデンブルガーは1992年に初の有機認証(Bioland)ビールを世に出し、1994年には全製品を有機の造り方へ完全に切り替えます。包括的な環境コンセプトを掲げてここまで踏み込んだのは、バイエルン州ではこの醸造所が最初だったと言われています。 今でこそ「サステナブル」「オーガニック」は当たり前の言葉ですが、30年以上も前にここまで舵を切ったというのは、本当に先見の明があったとしか言いようがありません。...
オクトーバーフェストのビールは何色?──「メルツェンだと思っていた」私たちが現地で知った、黄金...
オクトーバーフェストのビールは何色?──「メルツェンだと思っていた」私たちが現地で知った、黄金色になったワケとメルツェンの底力 ◯ ミュンヘンに行くまで、私たちも「メルツェンだ」と思い込んでいました 正直に告白します。私も、2025年9月に本場ミュンヘンを訪れるまで、「オクトーバーフェストのビール=あの琥珀色のメルツェン」だと思い込んでいました。 ところが、現地で実際に注がれていたのは、琥珀色ではなく、澄んだ淡い黄金色のビール。「あれ、メルツェンじゃないの?」というのが、正直な第一印象だったんです。 実はこの“勘違い”の裏には、オクトーバーフェスト200年あまりの歴史が隠れています。今日はその謎を、現地で飲んで(しかも飲みきれずに)実感したことと一緒に、ゆるりとお話しします。 ◯ テントを回って気づいた「同じ黄金色でも、全然違う」 会場でいくつかのテントを回ってみて、おもしろい発見がありました。同じ黄金色のフェストビールなのに、造り手が変わると、驚くほど飲み心地が違うんです。とくに印象に残ったのは、好対照だった2杯でした。 《アウグスティーナーの木樽が、別格だった》 ひとつは、アウグスティーナーのフェストビア。これが、もう、おいしすぎました。 澄んだ黄金色で、ひと口飲むと麦の旨味がじわっと広がるのに、驚くほど軽やか。すいすい盃が進みます。実はアウグスティーナーは、会場の6醸造所のなかで唯一、今も木樽から手間ひまかけてビールを注ぐ醸造所。地元ミュンヘンっ子からも「ヴィーズン(オクトーバーフェストの愛称)でいちばん旨い」としばしば評される一本です。その造りの良さが、あの“軽いのに旨い”に表れているんですね。日本ではあまり知られていませんが、現地での評価はちょっと特別。この木樽のフェストビアの話は訪問記の回で、アウグスティーナーの醸造のこだわりはこちらの回で、それぞれたっぷり語っています。 《パウラーナーの1リットルは、飲みきれなかった》 もうひとつは、パウラーナーのフェストビア。こちらは正直に告白すると——1リットルを最後まで飲みきれませんでした(笑)。 オクトーバーフェストのビールは「マス」と呼ばれる1リットルの巨大ジョッキで提供され、ハーフサイズはほぼありません。なみなみ注ぐと重さは約2.3kgにもなります。すでに何杯か重ねた体に、これはなかなか効きました。しかも直前に飲んだアウグスティーナーがおいしすぎた、というのもあったかもしれません(笑)。同じ黄金色のフェストビールでも、ここまで表情が変わるのか、と実感した一日でした。 ちなみに、このマス1杯のお値段は2024年でおよそ15ユーロ(約2,400円)。しかも会場では水も負けないくらい高い、というから驚きです。それでも2024年には約670万人が来場し、合わせて約700万杯ものマスが空けられたというのだから、本場のスケールはやっぱり桁違いですね。 ◯ そもそも「フェストビール」って、何者? ここで、現地で飲んだあの黄金色のビールの正体を、はっきりさせておきましょう。 オクトーバーフェストで出されるのは、その時期・その場所でしか飲めない特別な「フェストビール(フェストビア)」。ざっくり言うと、ヘレスを、もう少しコク深く・度数高めにしたようなビールです。澄んだ黄金色で、口当たりはすっきり軽やか。なのに度数は約6%と、ふだんのドイツビール(5%前後)より一段高いんです(いちばん強いホフブロイは6.3%もあります)。色はあくまで澄んだ金色で、赤みを帯びた琥珀色のメルツェンとは、ここがはっきり違います。 🍻ヘレスみたいな顔をして、しっかり強い この「軽いのに強い」が、なかなかの曲者でして。 麦の旨味たっぷりで口当たりがいいものだから、ドイツでは「液体のパン」なんて呼ばれるほど。するする飲めてしまう。でも中身は1リットル × 約6%。軽い気持ちで飲み進めると、じわじわ効いてくるんです。隣のドイツの人たちが涼しい顔で何杯もおかわりしていくのを横目に、私はギブアップ。本場の洗礼を、しっかり受けてきました。 ◯...
オクトーバーフェストのビールは何色?──「メルツェンだと思っていた」私たちが現地で知った、黄金...
オクトーバーフェストのビールは何色?──「メルツェンだと思っていた」私たちが現地で知った、黄金色になったワケとメルツェンの底力 ◯ ミュンヘンに行くまで、私たちも「メルツェンだ」と思い込んでいました 正直に告白します。私も、2025年9月に本場ミュンヘンを訪れるまで、「オクトーバーフェストのビール=あの琥珀色のメルツェン」だと思い込んでいました。 ところが、現地で実際に注がれていたのは、琥珀色ではなく、澄んだ淡い黄金色のビール。「あれ、メルツェンじゃないの?」というのが、正直な第一印象だったんです。 実はこの“勘違い”の裏には、オクトーバーフェスト200年あまりの歴史が隠れています。今日はその謎を、現地で飲んで(しかも飲みきれずに)実感したことと一緒に、ゆるりとお話しします。 ◯ テントを回って気づいた「同じ黄金色でも、全然違う」 会場でいくつかのテントを回ってみて、おもしろい発見がありました。同じ黄金色のフェストビールなのに、造り手が変わると、驚くほど飲み心地が違うんです。とくに印象に残ったのは、好対照だった2杯でした。 《アウグスティーナーの木樽が、別格だった》 ひとつは、アウグスティーナーのフェストビア。これが、もう、おいしすぎました。 澄んだ黄金色で、ひと口飲むと麦の旨味がじわっと広がるのに、驚くほど軽やか。すいすい盃が進みます。実はアウグスティーナーは、会場の6醸造所のなかで唯一、今も木樽から手間ひまかけてビールを注ぐ醸造所。地元ミュンヘンっ子からも「ヴィーズン(オクトーバーフェストの愛称)でいちばん旨い」としばしば評される一本です。その造りの良さが、あの“軽いのに旨い”に表れているんですね。日本ではあまり知られていませんが、現地での評価はちょっと特別。この木樽のフェストビアの話は訪問記の回で、アウグスティーナーの醸造のこだわりはこちらの回で、それぞれたっぷり語っています。 《パウラーナーの1リットルは、飲みきれなかった》 もうひとつは、パウラーナーのフェストビア。こちらは正直に告白すると——1リットルを最後まで飲みきれませんでした(笑)。 オクトーバーフェストのビールは「マス」と呼ばれる1リットルの巨大ジョッキで提供され、ハーフサイズはほぼありません。なみなみ注ぐと重さは約2.3kgにもなります。すでに何杯か重ねた体に、これはなかなか効きました。しかも直前に飲んだアウグスティーナーがおいしすぎた、というのもあったかもしれません(笑)。同じ黄金色のフェストビールでも、ここまで表情が変わるのか、と実感した一日でした。 ちなみに、このマス1杯のお値段は2024年でおよそ15ユーロ(約2,400円)。しかも会場では水も負けないくらい高い、というから驚きです。それでも2024年には約670万人が来場し、合わせて約700万杯ものマスが空けられたというのだから、本場のスケールはやっぱり桁違いですね。 ◯ そもそも「フェストビール」って、何者? ここで、現地で飲んだあの黄金色のビールの正体を、はっきりさせておきましょう。 オクトーバーフェストで出されるのは、その時期・その場所でしか飲めない特別な「フェストビール(フェストビア)」。ざっくり言うと、ヘレスを、もう少しコク深く・度数高めにしたようなビールです。澄んだ黄金色で、口当たりはすっきり軽やか。なのに度数は約6%と、ふだんのドイツビール(5%前後)より一段高いんです(いちばん強いホフブロイは6.3%もあります)。色はあくまで澄んだ金色で、赤みを帯びた琥珀色のメルツェンとは、ここがはっきり違います。 🍻ヘレスみたいな顔をして、しっかり強い この「軽いのに強い」が、なかなかの曲者でして。 麦の旨味たっぷりで口当たりがいいものだから、ドイツでは「液体のパン」なんて呼ばれるほど。するする飲めてしまう。でも中身は1リットル × 約6%。軽い気持ちで飲み進めると、じわじわ効いてくるんです。隣のドイツの人たちが涼しい顔で何杯もおかわりしていくのを横目に、私はギブアップ。本場の洗礼を、しっかり受けてきました。 ◯...
オクトーバーフェストの意味とは?「10月の祭り」が9月に始まる本場バイエルンの魅力
オクトーバーフェストの意味とは?「10月の祭り」が9月に始まる本場バイエルンの魅力 「オクトーバーフェスト」って、名前に「10月(オクトーバー)」と入っているのに、いちばん盛り上がるのは9月なんです。実は私たちシュマッツチームも、2025年9月にバイエルンを旅して、その理由を肌で感じてきました。本場の空気とともに、オクトーバーフェストの意味と「お祭りと外飲みの季節」としての魅力をお届けします。 ◯ オクトーバーフェストの意味は、そのまんま「10月の祭り」 「Oktober」+「Fest」を分解すると まずは名前の話から。オクトーバーフェスト(Oktoberfest)は、ドイツ語を分解するとびっくりするほどシンプルです。 「Oktober(オクトーバー)」=10月、「Fest(フェスト)」=お祭り。つまり**オクトーバーフェストの意味は、そのまま「10月のお祭り」**なんですね。 名前は10月、中身は9月というちぐはぐ ところが、ややこしい。現在のメイン会場、ミュンヘンのオクトーバーフェストは、毎年9月の後半に幕を開けます。2025年も開幕は9月20日でした。 名前は「10月」、中身は「9月」。このちぐはぐ、気になりますよね。 ◯ なんで「10月の祭り」なのに9月開催なの? もともとは本当に10月開催だった 理由はあっさりしています。もともとは本当に10月開催だったんです。 でも、ミュンヘンの10月はとにかく寒い。屋外でビールを楽しむには、ちょっと厳しい季節なんですね。 💡 1829年、開幕4日後の吹雪 10月のミュンヘンがいかに冷えるかを物語る逸話として、1829年には開幕からわずか4日後に吹雪に見舞われ、屋台が全部閉まってしまった、という記録も残っているほど。 そんな寒さも背景にありつつ、街の発展や天候の良さといった事情が重なって、開催時期は少しずつ前倒しされていきました。やがて9月開催が定着し、今では9月後半に始まって、最後の数日だけが10月にかかる——という形に落ち着いています。 名前は「10月の祭り」のまま、中身だけ9月に引っ越した。歴史って、こういう「言われてみれば」が面白いですよね。 ◯ そもそもの始まりは、王子さまの結婚式だった 1810年、ルートヴィヒ皇太子とテレーゼ妃の祝宴 ここで少しだけ、ルーツの話を。 時は1810年。バイエルンのルートヴィヒ皇太子(のちのルートヴィヒ1世)と、テレーゼ妃の結婚を祝うお祝いごとが、すべての始まりでした。 このとき、結婚を祝う祝賀行事の幕開けとして10月17日に開かれた競馬が、記念すべき「第1回オクトーバーフェスト」とされています。会場となった広大な草原は、のちにテレーゼ妃にちなんで「テレージエンヴィーゼ(Theresienwiese=テレーゼの草原)」と名付けられました。 💡地元では「オクトーバーフェスト」と呼ばない ちなみに地元の人たちは、この祭りを「オクトーバーフェスト」とはあまり呼びません。会場の名前を縮めて、親しみを込めて「ヴィーズン(Wiesn)」と呼ぶんです。この愛称、なんと2017年にはドイツ語の権威ある辞書「ドゥーデン」にも正式に収録されました。地元っ子の言葉が、お墨付きをもらった瞬間ですね。 歴史の深掘りはこのくらいにして。ここからが、今回いちばんお伝えしたい話です。 《私たちが2025年9月に見た、本場の「お祭りの季節」》...
オクトーバーフェストの意味とは?「10月の祭り」が9月に始まる本場バイエルンの魅力
オクトーバーフェストの意味とは?「10月の祭り」が9月に始まる本場バイエルンの魅力 「オクトーバーフェスト」って、名前に「10月(オクトーバー)」と入っているのに、いちばん盛り上がるのは9月なんです。実は私たちシュマッツチームも、2025年9月にバイエルンを旅して、その理由を肌で感じてきました。本場の空気とともに、オクトーバーフェストの意味と「お祭りと外飲みの季節」としての魅力をお届けします。 ◯ オクトーバーフェストの意味は、そのまんま「10月の祭り」 「Oktober」+「Fest」を分解すると まずは名前の話から。オクトーバーフェスト(Oktoberfest)は、ドイツ語を分解するとびっくりするほどシンプルです。 「Oktober(オクトーバー)」=10月、「Fest(フェスト)」=お祭り。つまり**オクトーバーフェストの意味は、そのまま「10月のお祭り」**なんですね。 名前は10月、中身は9月というちぐはぐ ところが、ややこしい。現在のメイン会場、ミュンヘンのオクトーバーフェストは、毎年9月の後半に幕を開けます。2025年も開幕は9月20日でした。 名前は「10月」、中身は「9月」。このちぐはぐ、気になりますよね。 ◯ なんで「10月の祭り」なのに9月開催なの? もともとは本当に10月開催だった 理由はあっさりしています。もともとは本当に10月開催だったんです。 でも、ミュンヘンの10月はとにかく寒い。屋外でビールを楽しむには、ちょっと厳しい季節なんですね。 💡 1829年、開幕4日後の吹雪 10月のミュンヘンがいかに冷えるかを物語る逸話として、1829年には開幕からわずか4日後に吹雪に見舞われ、屋台が全部閉まってしまった、という記録も残っているほど。 そんな寒さも背景にありつつ、街の発展や天候の良さといった事情が重なって、開催時期は少しずつ前倒しされていきました。やがて9月開催が定着し、今では9月後半に始まって、最後の数日だけが10月にかかる——という形に落ち着いています。 名前は「10月の祭り」のまま、中身だけ9月に引っ越した。歴史って、こういう「言われてみれば」が面白いですよね。 ◯ そもそもの始まりは、王子さまの結婚式だった 1810年、ルートヴィヒ皇太子とテレーゼ妃の祝宴 ここで少しだけ、ルーツの話を。 時は1810年。バイエルンのルートヴィヒ皇太子(のちのルートヴィヒ1世)と、テレーゼ妃の結婚を祝うお祝いごとが、すべての始まりでした。 このとき、結婚を祝う祝賀行事の幕開けとして10月17日に開かれた競馬が、記念すべき「第1回オクトーバーフェスト」とされています。会場となった広大な草原は、のちにテレーゼ妃にちなんで「テレージエンヴィーゼ(Theresienwiese=テレーゼの草原)」と名付けられました。 💡地元では「オクトーバーフェスト」と呼ばない ちなみに地元の人たちは、この祭りを「オクトーバーフェスト」とはあまり呼びません。会場の名前を縮めて、親しみを込めて「ヴィーズン(Wiesn)」と呼ぶんです。この愛称、なんと2017年にはドイツ語の権威ある辞書「ドゥーデン」にも正式に収録されました。地元っ子の言葉が、お墨付きをもらった瞬間ですね。 歴史の深掘りはこのくらいにして。ここからが、今回いちばんお伝えしたい話です。 《私たちが2025年9月に見た、本場の「お祭りの季節」》...
10杯のジョッキを運ぶウェイトレス、ビールを注ぎ続けるプロ、工場のような厨房──オクトーバーフ...
10杯のジョッキを運ぶウェイトレス、ビールを注ぎ続けるプロ、工場のような厨房──オクトーバーフェストを支える人たち テントの中で、思わず二度見した光景があります。 ひとりのウェイトレスが、両手で抱えたジョッキの山を、人混みの間をすり抜けるように運んでいく。数えてみたら8杯。1杯1リットルのビールがなみなみと入って、です。 「あれ、何キロあるんだろう……」 前回の記事では、オクトーバーフェストの「裏側」──主催者や出店権、設営の仕組みを解剖しました。でも現地で心を掴まれたのは、じつは仕組みよりも「人」だったんです。今回は、この巨大な祭りを最前線で支える人たちの話を。 「誰がこの祭りを動かしているのか」──主役は“人”だった 650万人が16日間で押し寄せる祭り。その一杯一杯を、最後に運んでいるのは生身の人間です。 テントの規模は工場並みでも、お客さんにビールを届ける瞬間は、結局のところ人の手にかかっている。私たちシュマッツもレストランの仕事をしているので、ここはどうしても気になってしまいました。 見れば見るほど、彼ら・彼女らの仕事は「すごい」を通り越して、ちょっと信じられないレベルなんです。 7杯、8杯、14杯──ジョッキを運ぶ超人技 標準は7杯、熟練者は8杯 現地のウェイトレスに話を聞くと、標準は「6杯+その上に1杯」の計7杯だそうです。取っ手を中央でぎゅっと握り、両手で抱える独特の持ち方をします。 熟練者になると8杯。重さにすると約18.5キロです。1リットルのジョッキは、満杯だと中身と合わせて約2.3キロありますから、米袋(5kg)3袋以上を抱えて歩き回る計算になります。 「もっと運べるけど、混んでるときは無理しないの」と、ある熟練のウェイトレスは笑っていたとか。安全第一、というわけですね。 記録は14杯以上、ギネスは19杯 ところが上には上がいます。報道では、一度に**14杯(約32キロ)**を運ぶ猛者が紹介されていました。個人記録で16杯という人も。 そしてギネス世界記録は、なんと19杯。2008年に達成された記録で、重さは約45キロにもなります。 45キロのビールを抱えて歩く。もはやアスリートの領域ですよね。あの華やかなディルンドル姿の裏に、これだけの体力勝負があるんです。 時給ゼロ? ウェイトレスは「自営業者」だった ビールを「仕入れて売る」という働き方 ここがいちばん驚いたところです。 オクトーバーフェストのウェイトレスの多くは、テントに雇われた「時給労働者」ではありません。立場としては自営業者(selbstständig)。テントからビールを“仕入れ値”で買い取り、お客さんにメニュー価格で提供して、その差額とチップが収入になる仕組みなんです。 つまり、たくさん運んで、たくさん売った人ほど稼げる。あの猛烈な運搬スピードには、ちゃんと経済的な理由があったわけですね。 シーズンで5,000〜16,000ユーロ、でも12時間×16日 気になる収入は、現地メディアやバイエルン州の観光情報によれば、シーズン全体でおおむね5,000〜16,000ユーロ。日本円にすると、ざっくり80万〜250万円ほどでしょうか。...
10杯のジョッキを運ぶウェイトレス、ビールを注ぎ続けるプロ、工場のような厨房──オクトーバーフ...
10杯のジョッキを運ぶウェイトレス、ビールを注ぎ続けるプロ、工場のような厨房──オクトーバーフェストを支える人たち テントの中で、思わず二度見した光景があります。 ひとりのウェイトレスが、両手で抱えたジョッキの山を、人混みの間をすり抜けるように運んでいく。数えてみたら8杯。1杯1リットルのビールがなみなみと入って、です。 「あれ、何キロあるんだろう……」 前回の記事では、オクトーバーフェストの「裏側」──主催者や出店権、設営の仕組みを解剖しました。でも現地で心を掴まれたのは、じつは仕組みよりも「人」だったんです。今回は、この巨大な祭りを最前線で支える人たちの話を。 「誰がこの祭りを動かしているのか」──主役は“人”だった 650万人が16日間で押し寄せる祭り。その一杯一杯を、最後に運んでいるのは生身の人間です。 テントの規模は工場並みでも、お客さんにビールを届ける瞬間は、結局のところ人の手にかかっている。私たちシュマッツもレストランの仕事をしているので、ここはどうしても気になってしまいました。 見れば見るほど、彼ら・彼女らの仕事は「すごい」を通り越して、ちょっと信じられないレベルなんです。 7杯、8杯、14杯──ジョッキを運ぶ超人技 標準は7杯、熟練者は8杯 現地のウェイトレスに話を聞くと、標準は「6杯+その上に1杯」の計7杯だそうです。取っ手を中央でぎゅっと握り、両手で抱える独特の持ち方をします。 熟練者になると8杯。重さにすると約18.5キロです。1リットルのジョッキは、満杯だと中身と合わせて約2.3キロありますから、米袋(5kg)3袋以上を抱えて歩き回る計算になります。 「もっと運べるけど、混んでるときは無理しないの」と、ある熟練のウェイトレスは笑っていたとか。安全第一、というわけですね。 記録は14杯以上、ギネスは19杯 ところが上には上がいます。報道では、一度に**14杯(約32キロ)**を運ぶ猛者が紹介されていました。個人記録で16杯という人も。 そしてギネス世界記録は、なんと19杯。2008年に達成された記録で、重さは約45キロにもなります。 45キロのビールを抱えて歩く。もはやアスリートの領域ですよね。あの華やかなディルンドル姿の裏に、これだけの体力勝負があるんです。 時給ゼロ? ウェイトレスは「自営業者」だった ビールを「仕入れて売る」という働き方 ここがいちばん驚いたところです。 オクトーバーフェストのウェイトレスの多くは、テントに雇われた「時給労働者」ではありません。立場としては自営業者(selbstständig)。テントからビールを“仕入れ値”で買い取り、お客さんにメニュー価格で提供して、その差額とチップが収入になる仕組みなんです。 つまり、たくさん運んで、たくさん売った人ほど稼げる。あの猛烈な運搬スピードには、ちゃんと経済的な理由があったわけですね。 シーズンで5,000〜16,000ユーロ、でも12時間×16日 気になる収入は、現地メディアやバイエルン州の観光情報によれば、シーズン全体でおおむね5,000〜16,000ユーロ。日本円にすると、ざっくり80万〜250万円ほどでしょうか。...
どうやって動かすのか?──主催者・出店者・広大な会場の仕組みを解剖する「オクトーバーフェストの裏側」
どうやって動かすのか?──主催者・出店者・広大な会場の仕組みを解剖する「オクトーバーフェストの裏側」 現地で何度も思ったことがあります。 「これ、どうやって回してるんだろう?」 飲食の仕事をしていると、どうしてもそういう目で見てしまうんですよね。仕入れは?スタッフのシフトは?仕込みのタイミングは?――でもオクトーバーフェストの場合、その問いの規模がもう私たちシュマッツとは全然違う次元ですが(笑)。 今回は、その「裏側」を以前ミュンヘンのオクトーバーフェストで働いた方にも話を聞き、迫ってみました。 「どうやって動かしているのか」──現地で湧いた素朴な疑問 ◯ 650万人を迎える「仮設の街」の規模感 オクトーバーフェストの会場は42ヘクタール(約42万平方メートル)。東京ドームのグラウンドが約4.6ヘクタールなので、単純計算で9個分ほどです。 「ふんふん」と聞き流せそうですよね。私たちも最初はそうでした。 でも実際に立つと、端から端まで歩いても歩いても終わらない。その敷地に、大型ビールテントが14棟以上、アトラクションが200基以上ひしめき合っています。電気・水道・ガスが引かれ、本格的なキッチンが動き、ATMまで並んでいる。 「街だ」と思いました。普通に。 ◯ 飲食の仕事をしているからこそ気になった裏側 たとえばシュマッツの一店舗でも、仕入れ・仕込み・スタッフ管理でそれなりの手間がかかります。でもオクトーバーフェストは16日間で650万人を迎える祭りです。気になってしまうのは職業病みたいなものかもしれません(笑)。 規模はケタ違いでも、問いかけは同じです。いったい誰が、どうやってこれを動かしているのか? テントを出す権利は「家業」として受け継がれる ◯ 13項目の採点表で決まるコンセッション争奪戦 テント出店者はミュンヘン市から出店権を与えられた業者です。希望すれば誰でも応募できますが、現実はかなり厳しい。 ミュンヘン市は出店希望者を13項目の採点基準で評価します。各項目は0〜11点で採点され、係数をかけた総合スコアで配分が決まる。事業計画の実現可能性、コンセプト、衛生・安全への取り組みなどが評価されますが、審査は市議会の非公開会議で行われるため、外からはほとんど見えません。 ◯ 5世代・160年──ショッテンハーメル家という伝説 この制度には、長く続けるほど有利になるしくみが組み込まれています。継続して出店している業者は5回の出店ごとに1ボーナスポイントが加算され、40年以上継続の飲食業者には「伝統ポイント」まで付与されます。 つまり、ボーナスが積み重なれば積み重なるほど、新参者が逆転するのは難しくなっていく。 その象徴がショッテンハーメル(Schottenhamel)家です。1867年から現在まで5世代にわたってテントを運営し続けています。オクトーバーフェストの開幕を告げる「開栓の儀」──ミュンヘン市長が最初のビール樽に木槌を打ち込む式典──が毎年行われるのも、この一族のテントです。...
どうやって動かすのか?──主催者・出店者・広大な会場の仕組みを解剖する「オクトーバーフェストの裏側」
どうやって動かすのか?──主催者・出店者・広大な会場の仕組みを解剖する「オクトーバーフェストの裏側」 現地で何度も思ったことがあります。 「これ、どうやって回してるんだろう?」 飲食の仕事をしていると、どうしてもそういう目で見てしまうんですよね。仕入れは?スタッフのシフトは?仕込みのタイミングは?――でもオクトーバーフェストの場合、その問いの規模がもう私たちシュマッツとは全然違う次元ですが(笑)。 今回は、その「裏側」を以前ミュンヘンのオクトーバーフェストで働いた方にも話を聞き、迫ってみました。 「どうやって動かしているのか」──現地で湧いた素朴な疑問 ◯ 650万人を迎える「仮設の街」の規模感 オクトーバーフェストの会場は42ヘクタール(約42万平方メートル)。東京ドームのグラウンドが約4.6ヘクタールなので、単純計算で9個分ほどです。 「ふんふん」と聞き流せそうですよね。私たちも最初はそうでした。 でも実際に立つと、端から端まで歩いても歩いても終わらない。その敷地に、大型ビールテントが14棟以上、アトラクションが200基以上ひしめき合っています。電気・水道・ガスが引かれ、本格的なキッチンが動き、ATMまで並んでいる。 「街だ」と思いました。普通に。 ◯ 飲食の仕事をしているからこそ気になった裏側 たとえばシュマッツの一店舗でも、仕入れ・仕込み・スタッフ管理でそれなりの手間がかかります。でもオクトーバーフェストは16日間で650万人を迎える祭りです。気になってしまうのは職業病みたいなものかもしれません(笑)。 規模はケタ違いでも、問いかけは同じです。いったい誰が、どうやってこれを動かしているのか? テントを出す権利は「家業」として受け継がれる ◯ 13項目の採点表で決まるコンセッション争奪戦 テント出店者はミュンヘン市から出店権を与えられた業者です。希望すれば誰でも応募できますが、現実はかなり厳しい。 ミュンヘン市は出店希望者を13項目の採点基準で評価します。各項目は0〜11点で採点され、係数をかけた総合スコアで配分が決まる。事業計画の実現可能性、コンセプト、衛生・安全への取り組みなどが評価されますが、審査は市議会の非公開会議で行われるため、外からはほとんど見えません。 ◯ 5世代・160年──ショッテンハーメル家という伝説 この制度には、長く続けるほど有利になるしくみが組み込まれています。継続して出店している業者は5回の出店ごとに1ボーナスポイントが加算され、40年以上継続の飲食業者には「伝統ポイント」まで付与されます。 つまり、ボーナスが積み重なれば積み重なるほど、新参者が逆転するのは難しくなっていく。 その象徴がショッテンハーメル(Schottenhamel)家です。1867年から現在まで5世代にわたってテントを運営し続けています。オクトーバーフェストの開幕を告げる「開栓の儀」──ミュンヘン市長が最初のビール樽に木槌を打ち込む式典──が毎年行われるのも、この一族のテントです。...
ソーセージだけじゃない──オクトーバーフェストで食べるべき本場料理と、ビールとの合わせ方【オク...
ソーセージだけじゃない──オクトーバーフェストで食べるべき本場料理と、ビールとの合わせ方【オクトーバーフェスト訪問記④】 「オクトーバーフェストって、ビールをたっぷり飲むところでしょ?」 正直、私たちシュマッツメンバーもそのくらいの認識でミュンヘンに向かいました。でも実際にテレージエンヴィーゼのテントに入った瞬間、ビールジョッキ以外にも様々な料理と、それをつくる巨大な調理場に驚きました。 テントに入って最初に気づいたこと──食事の存在感 「ビールだけ」では行かれない理由 オクトーバーフェストのテントに一歩入ると、まず目に飛び込んでくるのはジョッキを運ぶウェイトレスたちの姿。でもよく見ると、両手にジョッキだけでなく大皿も抱えています。丸焼きのチキン、骨付き豚脚、大判のブレッツェルが次々とテーブルへ。 テント内は基本的に着席制です。席を確保してウェイトレスを呼べば、料理もビールも一緒に注文できます。「立ち飲みでビールだけ」という場面はほとんど見かけませんでした。むしろ、料理を頼まずに飲んでいる人のほうが珍しいくらい。 ドイツ人にとって、ビールと食事は最初からセットなんです。おなかを満たしながら飲むことで、何時間でもテントにいられる。そういう設計で文化が作られているのを、現地で改めて肌で感じました。ビールの飲み方や楽しみ方の背景が気になる方は、こちらの記事「[本場ドイツのビールの楽しみ方]」もあわせて読んでみてください! まずは押さえておきたい、現地の定番3品 ヴィースンヘンドル──皮パリッと、ビール片手にかぶりつく テント内でいちばんよく見かけた料理が、ハーフチキン(ヴィースンヘンドル)です。「Wiesn(ヴィースン)」はテレージエンヴィーゼの通称、「Hendl(ヘンドル)」はバイエルン方言でニワトリのこと。「お祭りのチキン」という意味合いです。 これが想像以上においしい。ホフブロイのテントでは「frisch vom Spieß(串から取り立て)」と明記されていて、皮はパリパリ、中はジューシー。パセリとバターで仕上げた伝統製法で、手でつかんでかぶりつくのが現地のスタイル。ナイフとフォークを使っているのは観光客だったりします(笑)。 シュバインスハクセ──骨ごと出てくる迫力の豚脚 もう一つ、テント内で「おっ」となるのがシュバインスハクセ(Schweinshaxe)。豚の脚肉を丸ごとローストした一品で、大皿に骨ごとドンと出てきます。 外はカリカリ、中はほろりとほぐれる食感。2〜3人でシェアできるボリュームがあります。日本では「アイスバイン」という名前の塩漬け豚脚料理が知られていますが、シュバインスハクセはローストタイプで別物です。見た目のインパクトも含めて、「本場に来たな」と感じさせてくれる一皿でした。 ブレッツェル──それ、「プレッツェル」とは別物です 「プレッツェルって、コンビニで売っているカリカリのやつですよね?」 実は、オクトーバーフェストで食べるものはそれとは全然違います。現地での名称は「Brezel(ブレッツェル)」。バイエルン方言では「Brezn(ブレッツン)」と呼ばれています。 日本語の「プレッツェル」は英語の"pretzel"が由来で、主にスナック菓子のイメージとして定着しました。でも本場のブレッツェルはやわらかいパンです。ラウゲン(アルカリ液)に浸してから焼くことで、表面が深い茶褐色になり、独特のもっちり感と塩気が生まれます。 テントで出てくるサイズは、両手で抱えてもはみ出るほど大きい。ちぎって食べるのが正解で、ビールを飲みながらつまめるのがいいんです。「プレッツェル=スナック」のイメージしかなかった方は、ぜひ本物のブレッツェルを体験してみてほしいです。 バイエルン人が本当に好きなもの──オバツダという発明 廃棄から生まれた「チーズスプレッド」の正体...
ソーセージだけじゃない──オクトーバーフェストで食べるべき本場料理と、ビールとの合わせ方【オク...
ソーセージだけじゃない──オクトーバーフェストで食べるべき本場料理と、ビールとの合わせ方【オクトーバーフェスト訪問記④】 「オクトーバーフェストって、ビールをたっぷり飲むところでしょ?」 正直、私たちシュマッツメンバーもそのくらいの認識でミュンヘンに向かいました。でも実際にテレージエンヴィーゼのテントに入った瞬間、ビールジョッキ以外にも様々な料理と、それをつくる巨大な調理場に驚きました。 テントに入って最初に気づいたこと──食事の存在感 「ビールだけ」では行かれない理由 オクトーバーフェストのテントに一歩入ると、まず目に飛び込んでくるのはジョッキを運ぶウェイトレスたちの姿。でもよく見ると、両手にジョッキだけでなく大皿も抱えています。丸焼きのチキン、骨付き豚脚、大判のブレッツェルが次々とテーブルへ。 テント内は基本的に着席制です。席を確保してウェイトレスを呼べば、料理もビールも一緒に注文できます。「立ち飲みでビールだけ」という場面はほとんど見かけませんでした。むしろ、料理を頼まずに飲んでいる人のほうが珍しいくらい。 ドイツ人にとって、ビールと食事は最初からセットなんです。おなかを満たしながら飲むことで、何時間でもテントにいられる。そういう設計で文化が作られているのを、現地で改めて肌で感じました。ビールの飲み方や楽しみ方の背景が気になる方は、こちらの記事「[本場ドイツのビールの楽しみ方]」もあわせて読んでみてください! まずは押さえておきたい、現地の定番3品 ヴィースンヘンドル──皮パリッと、ビール片手にかぶりつく テント内でいちばんよく見かけた料理が、ハーフチキン(ヴィースンヘンドル)です。「Wiesn(ヴィースン)」はテレージエンヴィーゼの通称、「Hendl(ヘンドル)」はバイエルン方言でニワトリのこと。「お祭りのチキン」という意味合いです。 これが想像以上においしい。ホフブロイのテントでは「frisch vom Spieß(串から取り立て)」と明記されていて、皮はパリパリ、中はジューシー。パセリとバターで仕上げた伝統製法で、手でつかんでかぶりつくのが現地のスタイル。ナイフとフォークを使っているのは観光客だったりします(笑)。 シュバインスハクセ──骨ごと出てくる迫力の豚脚 もう一つ、テント内で「おっ」となるのがシュバインスハクセ(Schweinshaxe)。豚の脚肉を丸ごとローストした一品で、大皿に骨ごとドンと出てきます。 外はカリカリ、中はほろりとほぐれる食感。2〜3人でシェアできるボリュームがあります。日本では「アイスバイン」という名前の塩漬け豚脚料理が知られていますが、シュバインスハクセはローストタイプで別物です。見た目のインパクトも含めて、「本場に来たな」と感じさせてくれる一皿でした。 ブレッツェル──それ、「プレッツェル」とは別物です 「プレッツェルって、コンビニで売っているカリカリのやつですよね?」 実は、オクトーバーフェストで食べるものはそれとは全然違います。現地での名称は「Brezel(ブレッツェル)」。バイエルン方言では「Brezn(ブレッツン)」と呼ばれています。 日本語の「プレッツェル」は英語の"pretzel"が由来で、主にスナック菓子のイメージとして定着しました。でも本場のブレッツェルはやわらかいパンです。ラウゲン(アルカリ液)に浸してから焼くことで、表面が深い茶褐色になり、独特のもっちり感と塩気が生まれます。 テントで出てくるサイズは、両手で抱えてもはみ出るほど大きい。ちぎって食べるのが正解で、ビールを飲みながらつまめるのがいいんです。「プレッツェル=スナック」のイメージしかなかった方は、ぜひ本物のブレッツェルを体験してみてほしいです。 バイエルン人が本当に好きなもの──オバツダという発明 廃棄から生まれた「チーズスプレッド」の正体...
アウグスティーナーのビアホールで知った「軽いのに飲み応え」の秘密──ダブルデコクションと日常を...
アウグスティーナーのビアホールで知った「軽いのに飲み応え」の秘密──ダブルデコクションと日常を大切にするブランド哲学【オクトーバーフェスト訪問記③】 アウグスティーナーのビアホールに踏み込んだ日 あの木樽のビールを飲んでから、「なぜこんなに飲み続けられるのか」という問いが頭から離れませんでした。 前回の訪問記で書いたように、オクトーバーフェストの6大テントのうち、木樽(Holzfass)から直接ビールを提供しているのはアウグスティーナーだけです。1987年以降、ずっとそうしてきた唯一の醸造所。あのなめらかな口当たり、炭酸が舌を刺さずに麦の旨味がじわっと広がる感覚──その正体を確かめたくて、私たちシュマッツチームは翌日、ミュンヘン旧市街にある本拠地へ向かいました。 オクトーバーフェストの全体像はこちらのガイド記事で テントの興奮が冷めないうちに向かった本拠地 アウグスティーナー・ブロイシュトゥーベン(Augustiner Bräustuben)は、フラウエン教会からほど近い石造りのビアホールです。テントの喧騒とはまるで違う、落ち着いた空気がありました。木のテーブル、高い天井、地元のおじさんたちが昼から黙々とビールを飲んでいる。そういう場所です。 注文すると、バーテンダーがカウンター奥の木樽から、ガス圧を使わずにビールを注ぎます。シュッという音もなく、重力に従ってビールが静かにグラスへ落ちてくる。アウグスティーナーは「外部のガス圧を一切使わず、樽の重さと重力だけで提供する」という哲学を、公式サイトで堂々と宣言しています("It flows fresh and cool from the barrel, and only under the pressure of its own weight")。 石造りの空間と、重力だけで流れるビール 加圧していないということは、炭酸ガスの含有量が通常のケグビールより少ないということです。舌への刺激が弱い分、麦の旨味が直接届く。テントで感じた「やわらかさ」はここから来ていたわけです。 ちなみに、ブロイシュトゥーベンのバーカウンターには手動のエレベーターが設置されています。100リットルまでの重い木樽を上の階から降ろしてくるための設備です。タンクとガス圧に切り替えれば、そんな仕組みも人手も要らない。それでもやめないのは、このビールの「味」がそこにかかっているから。 「なぜ飲み続けられるのか」──前回からの問いを持って...
アウグスティーナーのビアホールで知った「軽いのに飲み応え」の秘密──ダブルデコクションと日常を...
アウグスティーナーのビアホールで知った「軽いのに飲み応え」の秘密──ダブルデコクションと日常を大切にするブランド哲学【オクトーバーフェスト訪問記③】 アウグスティーナーのビアホールに踏み込んだ日 あの木樽のビールを飲んでから、「なぜこんなに飲み続けられるのか」という問いが頭から離れませんでした。 前回の訪問記で書いたように、オクトーバーフェストの6大テントのうち、木樽(Holzfass)から直接ビールを提供しているのはアウグスティーナーだけです。1987年以降、ずっとそうしてきた唯一の醸造所。あのなめらかな口当たり、炭酸が舌を刺さずに麦の旨味がじわっと広がる感覚──その正体を確かめたくて、私たちシュマッツチームは翌日、ミュンヘン旧市街にある本拠地へ向かいました。 オクトーバーフェストの全体像はこちらのガイド記事で テントの興奮が冷めないうちに向かった本拠地 アウグスティーナー・ブロイシュトゥーベン(Augustiner Bräustuben)は、フラウエン教会からほど近い石造りのビアホールです。テントの喧騒とはまるで違う、落ち着いた空気がありました。木のテーブル、高い天井、地元のおじさんたちが昼から黙々とビールを飲んでいる。そういう場所です。 注文すると、バーテンダーがカウンター奥の木樽から、ガス圧を使わずにビールを注ぎます。シュッという音もなく、重力に従ってビールが静かにグラスへ落ちてくる。アウグスティーナーは「外部のガス圧を一切使わず、樽の重さと重力だけで提供する」という哲学を、公式サイトで堂々と宣言しています("It flows fresh and cool from the barrel, and only under the pressure of its own weight")。 石造りの空間と、重力だけで流れるビール 加圧していないということは、炭酸ガスの含有量が通常のケグビールより少ないということです。舌への刺激が弱い分、麦の旨味が直接届く。テントで感じた「やわらかさ」はここから来ていたわけです。 ちなみに、ブロイシュトゥーベンのバーカウンターには手動のエレベーターが設置されています。100リットルまでの重い木樽を上の階から降ろしてくるための設備です。タンクとガス圧に切り替えれば、そんな仕組みも人手も要らない。それでもやめないのは、このビールの「味」がそこにかかっているから。 「なぜ飲み続けられるのか」──前回からの問いを持って...
6大テントを飲み歩いて出会った「別格」──なぜアウグスティーナーだけが木樽で、あの塔に保管され...
6大テントを飲み歩いて出会った「別格」──なぜアウグスティーナーだけが木樽で、あの塔に保管されているのか【シュマッツ訪問記②】 「どのテントのビールがいちばんおすすめですか?」 これ、ミュンヘンのオクトーバーフェストに行く前から、正直ずっと悩んでいた問いでした。日本でドイツビールを扱うシュマッツとして、実際に飲み比べて確かめなければ答えられない。そう思って、6大醸造所テントをめぐる「飲み比べ行脚」に出発しました! まず驚いたのは、テントの「性格」の違いだった 6大醸造所(アウグスティーナー・パウラーナー・レーベンブロイ・ホフブロイ・ハッカー・プショル・シュパーテン)はそれぞれ数千人規模の巨大テント(Zelt/ツェルト)を構えています。 ホフブロイ(Hofbräu)のテントは、名前の知名度そのままに国際色が強い雰囲気でした。テーブルの上で踊る人、慣れない手つきで乾杯を繰り返す人。なんと、ここはベンチの上でのダンスを公式に許可している唯一のテントでもあるんです。外国語が飛び交い、雰囲気は完全に「観光地」のそれでした。 ハッカー・プショル(Hacker-Pschorr)の「Himmel der Bayern(ヒンメル・デア・バイエルン=バイエルンの天国)」は天井に青空と白い雲が描かれた独自の世界観が印象的。シュパーテン(Spaten)のSchottenhamel(ショッテンハーメル)テントは毎年の開会式「O'zapft is!(オアツァプフト・イス!)」が行われる歴史的な場所で、屋外ビアガーデンの広さは全テント随一です。 どこも雰囲気はある。でも、日本でドイツビールに詳しい人に事前に聞いていた答えがここで重なりました。「絶対アウグスティーナーだよ」と。 口に含んだ瞬間、「あ、これは違う」と思った アウグスティーナー・フェスタレに入ると、空気が少し違う感じがしました。1928年から基本構造が変わっていないというテント内部は、緑色のキャノピーが柔らかい光を作り出していて、ヴィンテージな落ち着きがあります。 席に着き、1リットルのマスジョッキ(Masskrug)を受け取る。口に含んだ瞬間、全員が同じことを感じました。 **炭酸の刺激が少ない。まろやか。するすると喉に入っていく。** アルコール度数は6.3%と決して低くはないのに、飲み疲れない。なぜだろう──その答えは、テントの外に出たときに待っていました。 6大醸造所で唯一、木樽を使い続けている ◯ 実は1987年以降、他の5社はスチールタンクへ移行していた アウグスティーナーには、他のすべての醸造所と根本的に違う点があります。**木樽(Holzfass/ホルツファス)からの提供**です。 実は今のオクトーバーフェストで、残りの5大醸造所はすべてステンレス製のタンクを使っているんです。転換点は1984年。木樽の調達が難しくなったことを理由に複数の醸造所がタンクに切り替え始め、1987年以降はアウグスティーナーだけが木樽を守り続けることになりました。 ◯ 200リットルの手作りオーク樽、その名も「Hirsch(ヒルシュ)」 アウグスティーナーの木樽には「**Hirsch(ヒルシュ)**」という名前があります。直訳すると「雄鹿」。満タンにすると重量が約300kgになり、それが成体の雄鹿とほぼ同じ重さだからという説が有力です。 一本一本が職人(Schäffler/シェフラー)の手作りで、製造には8〜10時間かかります。容量は200リットル、耐用年数は約30年。内側は伝統的な天然樹脂で定期的にコーティングされ(Picherei/ピッヒャライ)、大切に管理されています。ちなみに、樽の製造工場はミュンヘン近郊に醸造所直営で設けられていて、100年前と変わらぬ手仕事でHirschが作られているんですよ。 フェスト期間中に使う木樽はなんと**約1,100本**。1本の200L樽はフル稼働のテントでは約20分で空になります。空き樽は毎夜回収され、醸造所で洗浄・充填されて翌朝また会場へ。この24時間サイクルが「常に新鮮な樽のビール」を実現しているというわけです。 テントの外に立っていた「塔」──その正体に驚いた ◯ 1926年生まれ、2010年に復活した冷蔵タワー テントの外に出て、ふと視線を上げると──見慣れない構造物が立っていました。...
6大テントを飲み歩いて出会った「別格」──なぜアウグスティーナーだけが木樽で、あの塔に保管され...
6大テントを飲み歩いて出会った「別格」──なぜアウグスティーナーだけが木樽で、あの塔に保管されているのか【シュマッツ訪問記②】 「どのテントのビールがいちばんおすすめですか?」 これ、ミュンヘンのオクトーバーフェストに行く前から、正直ずっと悩んでいた問いでした。日本でドイツビールを扱うシュマッツとして、実際に飲み比べて確かめなければ答えられない。そう思って、6大醸造所テントをめぐる「飲み比べ行脚」に出発しました! まず驚いたのは、テントの「性格」の違いだった 6大醸造所(アウグスティーナー・パウラーナー・レーベンブロイ・ホフブロイ・ハッカー・プショル・シュパーテン)はそれぞれ数千人規模の巨大テント(Zelt/ツェルト)を構えています。 ホフブロイ(Hofbräu)のテントは、名前の知名度そのままに国際色が強い雰囲気でした。テーブルの上で踊る人、慣れない手つきで乾杯を繰り返す人。なんと、ここはベンチの上でのダンスを公式に許可している唯一のテントでもあるんです。外国語が飛び交い、雰囲気は完全に「観光地」のそれでした。 ハッカー・プショル(Hacker-Pschorr)の「Himmel der Bayern(ヒンメル・デア・バイエルン=バイエルンの天国)」は天井に青空と白い雲が描かれた独自の世界観が印象的。シュパーテン(Spaten)のSchottenhamel(ショッテンハーメル)テントは毎年の開会式「O'zapft is!(オアツァプフト・イス!)」が行われる歴史的な場所で、屋外ビアガーデンの広さは全テント随一です。 どこも雰囲気はある。でも、日本でドイツビールに詳しい人に事前に聞いていた答えがここで重なりました。「絶対アウグスティーナーだよ」と。 口に含んだ瞬間、「あ、これは違う」と思った アウグスティーナー・フェスタレに入ると、空気が少し違う感じがしました。1928年から基本構造が変わっていないというテント内部は、緑色のキャノピーが柔らかい光を作り出していて、ヴィンテージな落ち着きがあります。 席に着き、1リットルのマスジョッキ(Masskrug)を受け取る。口に含んだ瞬間、全員が同じことを感じました。 **炭酸の刺激が少ない。まろやか。するすると喉に入っていく。** アルコール度数は6.3%と決して低くはないのに、飲み疲れない。なぜだろう──その答えは、テントの外に出たときに待っていました。 6大醸造所で唯一、木樽を使い続けている ◯ 実は1987年以降、他の5社はスチールタンクへ移行していた アウグスティーナーには、他のすべての醸造所と根本的に違う点があります。**木樽(Holzfass/ホルツファス)からの提供**です。 実は今のオクトーバーフェストで、残りの5大醸造所はすべてステンレス製のタンクを使っているんです。転換点は1984年。木樽の調達が難しくなったことを理由に複数の醸造所がタンクに切り替え始め、1987年以降はアウグスティーナーだけが木樽を守り続けることになりました。 ◯ 200リットルの手作りオーク樽、その名も「Hirsch(ヒルシュ)」 アウグスティーナーの木樽には「**Hirsch(ヒルシュ)**」という名前があります。直訳すると「雄鹿」。満タンにすると重量が約300kgになり、それが成体の雄鹿とほぼ同じ重さだからという説が有力です。 一本一本が職人(Schäffler/シェフラー)の手作りで、製造には8〜10時間かかります。容量は200リットル、耐用年数は約30年。内側は伝統的な天然樹脂で定期的にコーティングされ(Picherei/ピッヒャライ)、大切に管理されています。ちなみに、樽の製造工場はミュンヘン近郊に醸造所直営で設けられていて、100年前と変わらぬ手仕事でHirschが作られているんですよ。 フェスト期間中に使う木樽はなんと**約1,100本**。1本の200L樽はフル稼働のテントでは約20分で空になります。空き樽は毎夜回収され、醸造所で洗浄・充填されて翌朝また会場へ。この24時間サイクルが「常に新鮮な樽のビール」を実現しているというわけです。 テントの外に立っていた「塔」──その正体に驚いた ◯ 1926年生まれ、2010年に復活した冷蔵タワー テントの外に出て、ふと視線を上げると──見慣れない構造物が立っていました。...